日本人が気づいていない、米中貿易戦争「これから本当に起きること」

完全に言いがかりであり「難癖」だが…
唐鎌 大輔 プロフィール

トランプの「難癖」が一番怖い

既報の通り、トランプ政権は自動車・同部品の輸入増加が安全保障上の脅威になるかどうか調査を開始しており、輸入車に25%の追加関税を課すことを検討している段階にある。

6月29日、日本政府は公式にこうした措置は世界経済にとって「破壊的な影響を及ぼし得る」と表明し、米国内の業界団体なども同様の表明をしている。また、日本自動車工業会は仮に追加関税が実施されれば、米国内における自動車生産の落ち込みを通じて現地雇用が減少する可能性も指摘している。

日本の製造業は米国内の外国企業の中でもとりわけ雇用増加に寄与しており、こうした指摘の説得力は高いと考えるべきだろう。ちなみに米商務省の統計によれば、外国企業による米国内での雇用者数(2015年)を見ると、全産業ベースで日本は12.6%を占め英国に次ぐ第2位、製造業に限れば16.3%で第1位(ちなみに2位はドイツで12.7%)である。評価こそされ、批判される筋合いには基本的には無い。

 

とはいえ、貿易に関して異様に被害妄想の強いトランプ大統領である。日本の対米自動車輸出はやはり叩き甲斐のあるトピックに映っている可能性はやはり高い。

下記の図表に示されるように、日本の世界向け輸出全体に占める米国の割合は過去30年余りで明確に低下しているが、その米国向け輸出に占める自動車の大きな割合はほとんど変わっていない。

2017年の財貿易に関し米国の対日赤字は▲699億ドルだが、このうち80%弱が自動車・同部品の赤字である。結果、米国の自動車市場における日本車の割合は40%弱に至っているという現状がある。

こうして見ると、日本にとって米国向け輸出の存在感が落ちているとは言っても、米国が体感する日本車輸入の存在感は依然大きなものと推測される。貿易赤字を忌み嫌うトランプ政権が日本の自動車輸出に目を付けるのは自然だろう。

もっとも、米国の自動車企業は既に本邦市場から撤退しているため、関税を調整したところで彼らの販売が増えるという話にはなりそうにない。とすれば、「難癖」をつけてくるとすれば「日本の自動車企業(に限らず製造業全般)は過剰な円安で利益を貪っている」といった類の論陣だろうか。その場合、日銀の金融政策運営が槍玉に上がる可能性も視野に入ってしまう。

すでに日本の製造業として出せるカードが無いのだとすれば、両国の金融政策格差やその結果としての円安に目をつけ、基軸通貨国として特権を行使してくる展開が最大のリスクかもしれない。

完全に言いがかりであり「難癖」だが、これまでのトランプ政権の挙動を見る限り、絶対に無いとは言えまい。

そもそも貿易交渉が拗れる中で為替相場に圧力をかけてくる手口はトランプ政権に限ったものではなく、1990年代後半の貿易摩擦時に嫌というほど見せつけられた米国の「お家芸」の1つでもある。

そうなった場合、日本側から抗う手段は乏しいゆえ、為替見通し上、最大のリスクと考えざるを得ない。いずれにせよこのあたりのトピックは本当に交渉が動き始めてから別途論じたいところである。