死刑執行…信者と面接して見えた「オウム事件」もう一つの現実

なぜ人々は信者と化したのか?
原田 隆之 プロフィール

「オウム事件」とは何だったのか

今回の死刑執行を機に、東京拘置所で出会った多くのオウム事件受刑者のことを思い出すと、巷で語られる「オウム事件」の姿とは大きく異なる現実がある。

たとえば、オウム真理教の信者について、「多くのエリート」が信者となり、その挙句凄惨な事件に加担していったということが驚きをもって語られることが多い。

たしかに、今回死刑が執行された教団元幹部たちの多くは、有名大学を出たエリートたちであった。

しかし、信者の大多数は、平均的な一般の人々であった。

 

私が面接したオウム信者たちも、取り立ててエリートということもなく、ハンナ・アーレントがナチスの高官であったアドルフ・アイヒマンを指して述べた「悪の凡庸さ」という言葉がしっくりと当てはまるような人々であった。

心理学の有名な実験に、アイヒマンの名前を取って「アイヒマン実験」と呼ばれるものがある。

アメリカの心理学者スタンレー・ミルグラムが行ったその実験では、一般の人々から参加者を募り、彼らは研究者の助手として実験室で研究者から命じられる手続きを実行するように言われた。

それは、目の前にいる別の参加者が、研究者から出された問題に間違った答えを出したとき、スイッチを押して電流を流すというものだ。

アイヒマン実験(PHOTO: Wikimedia Commons)

回答者役の参加者には、手首に付けられた電極から電流が流れ、苦悶の声を上げたり、やめてくれと懇願したりした。

しかし、助手役の参加者は、全員が300ボルトのレベルまで電流を流し続け、65%の者は研究者に命じられるまま、最大限(450ボルト)まで電流を流し続けた。

実は、実際には電流は流れておらず、回答者役の参加者はサクラであったが、ミルグラムが予想していた以上に、多くの参加者が研究者に「服従」し、相手の苦悶や懇願を無視して苦痛を与え続けたことは驚愕するような結果であった。

人間というものは、権威者から命じられると、驚くほど素直に服従し、しかも残酷になれるということが明らかにされた。まさに、ナチスのアイヒマン、オウム信者にも同じことが当てはまるだろう。