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あこがれの雲上世界へ! 富士山頂への正しい行き方

運動生理学に基づいた高山病対処法

「富士山に登りたい!」という希望をお持ちの登山者は多いことでしょう。日本の最高峰である富士山に登れるのは、年間で7月と8月の2ヵ月間だけですが、その間に、実に28万人もの人がこの山に挑みます(開山日から9月10日までの八合目における調査、環境省関東地方環境事務所の発表より)。

ロングセラー『山に登る前に読む本』から科学的登山術のエッセンスをご紹介する「科学的登山術」のコラム第2回では、まず「高山病」にスポットライトを当て、後半では富士山をはじめとする高山攻略のためのトレーニングのコツをお話しします。

富士山はもちろん、標高の高い山や、いつもより難易度の高い山に登る計画をしている人は必見です。(第1回はこちら

【写真】富士山頂にたたずむ登山者
  富士山頂にたたずむ登山者 photo by iStock

高山病を防ぐには?

富士山には登山道や山小屋がよく整備されていますので、歩行の難易度は決して高くはない山です。怖いのは「高山病」で、登山前に高山病の知識を身につけて、対策を講じておく必要があります。

では、富士登山の場合、高山病はどのあたり(標高)で発生するのでしょうか?

多くの方は、七合目から八合目あたりで急に動悸がし、息が上がり、足が重くなった、と感じるようです。

それらの症状の原因は、大気中に含まれる酸素量が減少するからですが、それが身体に影響を及ぼし始めるのが3200メートル前後で、富士山では七合目から八合目がちょうどその高さに相当します。

【写真】富士山で酸素減少の影響が出始める七合目
  富士山では、酸素減少の影響が出始めるのは七合目から八合目にかけて photo by iStock

この高さでは、低い山では「きつい」と感じられた程度のペースが、「非常にきつい」と感じられるようになります。登山の「きつさ」が、ワンランク上がるわけです。

ちなみに、さらに高度が上がって、エベレストの山頂付近にまでいたると、かなり体力のある人でも要介護者相当の体力に落ちてしまいます。

エベレストは極端としても、標高が高い山に登る場合は、日頃の登山よりもペースを落とすことを忘れてはいけません。

水分摂取にもコツあり

高地では、汗をかきやすくなるという現象も起こります。これにはメリットとデメリットが両方ありますが、気をつけなければならないのは、高地では平地に比べて喉の渇きを感じにくくなる、ということです。

汗をかきやすくなるということは、本来なら、平地と比べてより多くの水分補給が必要になるはずです。ところが、喉の渇きを感じないために、あまり水を飲まなくなります。やがて脱水量に水分摂取量が追いつかなくなり、体内が水分不足になって血液量が低下し、運動能力も低下する、という悪循環を招きます。

こうした事態を避けるには、夕飯時になるべく多くの水分を摂取することです。暖かい部屋やテント内で食事を摂ると、血糖値が上がり、身体が温まります。そうなると、喉の渇きを感じやすくなります。就寝時も枕元に水筒を置いて、適宜水を飲むといいでしょう。

【写真】枕元に水を
  枕元に水を用意するとよい photo by gettyimages

高地に長く滞在していると、人間はその環境に馴れていきます。これを「高地馴化」といいます。しかし、高地に馴化するには、環境にもよりますが7日間程度が必要です。したがって、富士山のような短期登山では、高地に完全に馴化することはできません。

ただし、ゆっくり登ることである程度順応することは可能です。富士山の場合でも、弾丸登山は絶対に避けるべきで、七合目くらいでできるだけ十分な休憩を取るといいでしょう。あるいは、七合目以上の高度ではゆっくりとしたペースに落とし、身体が少しでも高度に順応する時間を取るような登り方をすべきです。

【写真】富士山七合目 身体を高度に慣らす
  富士山なら七合目で休憩を取り、身体を高度に慣らすと良い photo by iStock