新人看護師が必ずミスする、医療世界の「誤解ワード」

覆面ドクターのないしょ話 第24回
佐々木 次郎 プロフィール

患者さんは、ちょっと変わった名前だった……!?

ある全身麻酔の手術でのこと。手術は無事に終わり、後は患者さんが目を覚ますのを待つのみだった。ちょうどタイミングよく点滴が終わり、麻酔科医が看護師に指示を出した。

 

医師「新しいボトルと交換してください。『おかず』なしでいいです」
看護師「はい、わかりました。『たんみ』のボトルと交換します」

看護師はボトルにマジックで「たんみ」と大きくひらがなで書いた。

看護師がボトルを交換し終わったそのとき、手術室のドアが開いて交代要員の看護師が入ってきた。入って来たのは新人看護師だった。

「交代するように主任から指示があってまいりました」
「私、手術器具を片づけるから、もう一人の看護師といっしょに患者さんの覚醒から退室まで介助してくれる? お願いね」

患者さんの眠りが浅くなり、目が覚めてきたようだ。麻酔科医が肩をたたいて刺激を加える。

「手術終わりましたよ。目を開けてください。わかりますか?」

もう少しで覚醒しそうなのだが、まだ眠いのか、患者さんは目を開けない。再度麻酔科医が声をかける。

「目を開けてください! 目を開けて!……チェッ、起きねぇな」

交代で入った新人看護師は意欲的だった。

「私も積極的に手伝わなければ!」

そう思った(らしい)。

「えーっと、患者さんの名前は……」

急に交代を頼まれたから、患者さんの名前をチェックし忘れていた。ふと点滴を見ると、ボトルに名前らしきものがデカデカと書かれている。

「変わってる名前だなぁ」

目を覚まさない患者さんに向かって彼女は叫んだ。

「たんみさん!」

周囲にいたスタッフ全員が「?」と耳を疑った。ヤル気まんまんの彼女は気にかける様子もなく叫び続けた。

「たんみさん! 起きてください! たんみさん! ほら目を開けて! たんみさーん!」

「たんみさーん!」(photo by istock)

翌日から、この新人看護師のニックネームは「たんみさん」になった。