医療界の略語はこんなに面倒で、病院内で「勘違い」が多発中

覆面ドクターのないしょ話 第23回
佐々木 次郎 プロフィール

勝手に略語を作らないで!

中高年の男性に現れるある症状を示す略語を誤解し、私が仕出かした恥ずかしい失敗談を御紹介したい。

男性患者の訴えを聞いて、ある担当看護師はそのときどきの看護記録に下記のように記載していた。

 

「昨日はEDがあったが、今日はスッキリ元気」
「最近EDがあり、妻に指摘されてしまった」
「かなり強いEDがあったが、本人『もっと頑張らなきゃ』と言っている」

私は思わず同情してしまった。

「昨日は頑張れなかったが、今日はスッキリ元気」

——一時的にでも自信を取り戻せて何よりです。

「妻に指摘された」

——いや~、それはショックだったでしょう。自分が一番よくわかっているんですから。人に言われたくなんかない。まして、それを妻に指摘されるなんて!

「あなたって人は、昼も夜も役立たずね」

——まさか、そんなひどいことを言われたんじゃないでしょうね?

「かなり強いEDがあったが、もっと頑張らなきゃ」

——思うようにならない心と体の葛藤。おおいに戸惑ったことでしょう。お察しいたします。

「俺はこんなもんじゃないんだ!」

——そう言いたいでしょう。 かなり無理をされたんですね。でもあなたは十分に頑張りました。ダメなときだってあるんですから、もうそのくらいでいいのではないでしょうか? なぜそこまで頑張るのですか? 生涯現役……男の意地ですか?

回診のとき、胸が痛んで担当看護師に尋ねた。

「この患者さん、かなり意地になってるみたいだけど、大丈夫なの?」
「ええ、ときどきヤケ起してお酒飲んじゃうそうです」
「奥さんに指摘されたんだって?」
「はい。あの奥さん、足も結構よく見てくれてます」
「足ってどこの足? でもね、奥さんに言われちゃショックだよね」
「しょうがないですよ。若い頃からさんざん飲めや歌えやで、奥さんの言うこと全然聞かなかったんですから」
「もうその辺で許してあげたら?」
「甘やかしちゃダメですよ。あんなに足むくんでるんですから。頑張ってもらわないと……腎臓のためにも」
「腎臓のため?」
「え? 先生は何だと思ったんですか?」
「だってEDって書いてあるから…あっち(ED=勃起不全)の話かと……」
「や~だぁ」

自分勝手な略語を思いつくのはやめていただきたい(photo by istock)

浮腫(むくみ)を英語でedema(エデーマ)という。この看護師は、患者さんのむくみを、自分だけの略語として「ED」と書いていたのだった。