ラッパー宇多丸と民俗学者が語り合う「日本語ラップの思想と可能性」

NHKで異色トークが放映!
畑中 章宏 プロフィール

ライムスターの音楽性

ライムスターは、宇多丸、MUMMY-Dの2人のMC、DJ JINからなるヒップホップ・グループで、ヒップホップやラップが日本に定着する以前から日本語ラップの表現を模索し、牽引してきた。

宇多丸氏は1969年東京都文京区生まれ、早稲田大学法学部在学中に、同大政治経済学部のMUMMY-D氏と出会い、ライムスターを結成。1993年にアルバム『俺に言わせりゃ』でデビューし、同じ年EAST ENDやMELLOW YELLOWらとヒップホップコミュニティFunky Grammarを結成した。メジャーシーンに移ってから、これまでに10枚のオリジナルアルバムをリリース。

宇多丸氏はまた、ラジオパーソナリティとして、2007年4月からTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」のDJとしても活躍・映画批評コーナーが大きな話題を集めた。

今年3月の同番組終了後、4月2日からあらたに平日の帯番組「アフター6ジャンクション」のメインパーソナリティを担当している。

(C)NHK

実父は、精神科医で日本初の完全開放の精神病院を実現し、『心病める人たち 開かれた精神医療へ』(岩波新書)など著書もある石川信義氏。宇多丸というユニークなMC名は桂歌丸と宇多田ヒカルに由来する。

ライムスターには、ニューヨークで起きた同時多発テロ後の世界をテーマにした「911エブリデイ 」(2003年)や、東日本大震災と福島第一原発事故をモチーフにした「ゆめのしま」「ダーティサイエンス」(2013年)といった曲もある。

 

ただ一方で、宇多丸は東京出身、Mummy-Dは横浜出身であり、地域性や階層へのこだわりは薄いようである。

番組の前半では、筆者がRHYMESTERが主催する音楽フェスティバル「人間交差点」を訪ね、その翌日にはスタジオで宇多丸氏に質問を重ねた。後半で柳田国男の『遠野物語』の舞台である岩手県遠野市で筆者がインタビューを受けた。

前半の東京では、音楽にメッセージをどのようにのせていくのかといった、緊張感に満ちた話題が多かったように思う。一方東北では、“語りえない”ことをどう伝えていくことができるのかという、かなり本質的な対話になっているはずだ。

“語り”のプロである宇多丸氏と、“語りえない”ことにこだわる民俗学者――。今夜ふたりのライブを、ぜひお楽しみいただきたい。