ハンドスピナーのブレイクから読み解く「ヒットの導線」

売れるもの、の原則はとてもシンプルだ
山本 智也 プロフィール

ハンドスピナー、ヒットの理由

冒頭で述べた通り、ハンドスピナーは2017年5月から日本で大流行となりましたが、私がハンドスピナーに注目したのはそれより少し早い、2017年の3月頃でした。

その時期、私はスマホケースの買い付けのために中国の深センを訪れていました。

その際、とあるマーケットの店員が、接客の合間に手元でくるくると回していたのが、ハンドスピナーだったのです。

これを見た瞬間、「この玩具は確実に流行る」と直感しました。私の思う「ヒットの2原則」をいずれも満たしていたからです。

まず1つ目「世の中で必要にされているモノ」であったこと。ハンドスピナーは、まさに世の中に必要とされている商品だったのです。

いまや、日本人のほとんどがスマホを利用しています。スマートフォンの利点をあげればきりがありませんが、便利さの一方で、ゲームや音楽、あるいはSNSのやりすぎから、スマホが手放せないという依存症も生み出しています。そんな「スマホ依存症」を解消するのに、ハンドスピナーはぴったりだったのです。

ハンドスピナーを回していれば手持ち無沙汰感が解消されるため、用もないのにスマホを触る、という行動を抑制できます(疑う人は、ぜひ一度ハンドスピナーを手に取ってください。スマホに手を伸ばす回数が劇的に減るはずです)。

まさに、ハンドスピナーはスマホ依存時代に求められるもの=「世の中に必要とされているモノ」であったのです。

 

次に、2つ目の「商品を広めるための適切な手段がある」についてです。

ハンドスピナーは、Twitter、InstagramなどのSNSとの相性が抜群によい玩具です。ハンドスピナーを回転させている様子をスマホのカメラで撮影すると、ストロボ効果が起こって、ハンドスピナーが逆回転しているように見えるのです。まさに「SNS映え」という言葉が当てはまる玩具です。より適切な言い方をすれば「動画映え」です。

ハンドスピナーを回して、この逆回転を撮影をした瞬間、分かりました。「これは、YouTubeで流行ったり、SNSで拡散される可能性が高いな」と。

この感覚が正しいものであったことは、すぐに実証されました。私が「ハンドスピナーは流行るな」と思っていた直後のことです。日本を代表するYouTuberの一人、セイキン氏が2017年3月28日に「手で回すと超高速回転するハンドスピナーがスゴすぎる!どれが一番長く回り続けるか検証します。」という動画を公開したのです。

セイキン氏が紹介したことで、新しいものが好きな人たちの間で、「ハンドスピナーが欲しい・気になる」という欲求が加速化していったのです。

実際その後、BOUNCYというメディアサイトでもハンドスピナーの動画が投稿されましたし、YouTube上にもハンドスピナーを回す動画が上がってくるようになりました。コメント欄には、「何これ?」「めっちゃ欲しい!」という書き込みが殺到。まさに、動画を見たネットユーザーが、勝手連的にSNSでハンドスピナーの拡散を始めたのです。

その後の展開は、前述のとおりです。5月8日に、「ねとらぼ」の記事がYahooのトップページに掲載されたことをきっかけに、噴火寸前の火山が一気に噴火するかの如く、ハンドスピナーの大流行が始まったのです。

そして、流行すればするほど、前述の「公式ページ」を訪れる人が増え、ハンドスピナーの売り上げも上がり、最終的に短期間で20万個を超える販売を記録するまでになったのです。

特別な何か、があったわけではありません。「何が流行るか」「どうやって流行るか」を頭の中で考え抜き、「流行」が訪れたときのために、情報と販売のルートを確保しておく……。

これが、私の辿り着いたひとつの「ヒットの法則」であり、「モノを売るための原則」なのです。

次回は、「壁にくっつくスマホケース」WAYLLYがなぜ10代女子の間で爆発的ヒットを記録しているのか、その秘密を明かしたいと思います。