元衆院議員が明かす「選挙とカネ」の語られざる闇

細野豪志5千万円借入報道を受けて
井戸 まさえ プロフィール

平時における政治資金の入りと出

さて、5000万円の借り入れの額は果たして高いのか安いのか。

まずは選挙に出る人の日常的なお金の出入りを見てみよう。

民進党の場合、選挙がない時期、次期衆議院選挙の候補者である総支部長には月50万円が支給されていた。

それは全額、政党支部への交付金という形で受けとるか、もしくはそれを二つの形に分割し30万円の交付金と20万円の候補者個人への業務委託契約という形式で受けるかは選択ができる。

個人への業務委託形式にすると、その20万円は個人の収入になるため、その分の使途報告義務はなくなる。一方で業務である以上はパフォーマンスに対する報告義務があり、名刺を何枚配ったか、ポスターをどれほど貼ったか等の簡単なレポートを毎月提出する。

細かい話になるが、源泉徴収をされた後の収入が20万円となるため、確定申告をし、経費等が認められれば源泉分、約1ヵ月分は戻ってくる場合もある。

2009年の政権交代直前は50万円の政党交付金と、現職地方議員等以外の、落選者や新人で仕事をしていないものに対して20万円の委託金が加えられ70万円という形だったが、2012年以降は委託金はなくなり、都合50万円に減額されて2017年の選挙に至っていた。

ただし、これにも「例外」があり、人によってはさらに20万円の上乗せがあった。しかし、誰が受けとっているか等は公開されてはいないももの、何らかの形でそのことが漏れると、当然だがその選抜理由が不透明で不公平だとの批判の声は上がる。

総選挙直前の代表選の折にも指摘され、その後改善される予定だったが、あっという間の解散で、立ち消えになった。

 

戦時における選挙資金

政局が動き、「いよいよ選挙になりそうだ」との流れが出てくると、政党から今まで支給されていた交付金等は停止され、公認料等の選挙費用が振り込まれるようになる。会計上の扱いについては、違反にならないよう党本部の経理からは細かく指示が出る。

衆議院選挙の場合、民主党・民進党では1500万円が基準である。そこに選挙区の事情や情勢が加味され500万、1000万円と上積みされていく仕組みだ。

民進党選挙対策委員会の事務局から、公認料を出すので個人口座登録をしろという連絡が候補者の事務所にあったのは2017年9月19日だ。この連絡がきた3日後の9月22日にはまず、政党交付金500万円が振り込まれた。

その日は前原誠司新代表が人事の目玉として幹事長に抜擢した山尾志桜里氏が週刊誌にスキャンダルを書かれ民進党を離党した日だ。

離党者の流れは止まず、相変わらず民進党が揺れていた時期だ。この資金についてはある意味「踏み絵」的にも使われていた。離党予備軍かもしれないと状況的に判断がつく総支部長に関しては、振り込まれなかったのだ。

それ自体が「異例」のことだ。

こうした資金は横並び的に同日に、基本的には同額支給される。

そののち選挙区事情によってさらなる振込がある場合もあるが、少なくともその時に同じ総支部長という役職についていたにも関わらず、振り込まれたり、振り込まれなかったりということはあり得なかった。

資金を出した総支部長に対しても、党本部は警戒していた。中には現状では把握しきれていない中にも離党を考えている者もいるかもしれない。

ある意味持ち逃げされないためにも、領収書を期限まで提出するように求めるとともに、今後もし離党等がある場合、速やかに返還することを約する書類も添えられていた。

もし、この領収書等を送ってこないということは離党を考えている可能性があるとも取れる。疑心暗鬼、信頼がなくなっていることを実感させられることでもあった。

党の混乱と困惑は公認料等にも表われる。小池氏の「排除」発言もあり、全員が希望の党の公認とならないとわかると、党の決定に従って希望の党にいくものは2000万円、党の以降と別の選択である立憲民主党や無所属で選挙を闘うものは1500万円支給されることとなった。直前まで総支部長であれば選挙に出なくとも1500万円は返金する必要はないとの説明も受けた。

一方、前原氏が希望の党に合流することを発表する日以前に先行して離党した候補者たちはそのタイミングによって公認料等の受け取りに差がでた。希望の党で立候補したが、たった一日前に民進党を離党したために2000万円がゼロ、といった具合に。

ともかく先に離党して、希望の党の公認の椅子に座ることが、衆議院選挙勝利の近道だと信じていた人々は、選挙資金より当選確率にかけたのである。よもやこんな展開になるとは思ってもみなかっただろう。