私たちが「クソどうでもいい仕事」に忙殺されてしまう意外な理由

何のための労働なのか
藤田 結子 プロフィール

何のための労働なのか

利益を最大化しコストを最小化するはずの資本主義社会において、なぜなくても困らない「クソどうでもいい」仕事に賃金が支払われ続けるのだろうか。

それは、経済的に意味がなくても、政治的な機能があるにちがいなく、富の大部分を手にした1%の支配階級にとって都合がいいとグレーバーは指摘する。

人々が仕事に忙殺されていれば、暴動を起こしにくい。幸福で生産的な人々が自由時間を手にすることは、歴史が物語るように、支配階級にとって非常に危険なのだ。

そして、このような社会のシステムは決して意図的に設計されたわけでなく、一世紀に及ぶ無策によって出現したという。

グレーバーは解決策を示すことにためらいつつも、人々がどうでもいい仕事から解放される手段として、ベーシックインカムに言及している。

 

グレーバーは、名門ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の教授であるが、アナキスト、活動家としても知られている。

2011年にニューヨークで起きた抗議活動、オキュパイ・ウォール・ストリート(ウォール街を占拠せよ)の理論的主導者でもあり、「われわれは99%」というスローガンを創出した1人だ。

〔PHOTO〕iStock

グレーバーの主張に対して、頭のおかしい陰謀論だとか、そんなことは以前から言われているとか、批判も多くよせられている。

また、この本には「クソどうでもいい仕事」につくホワイトカラーをこばかにするような記述がちらほら見られ、不快な気持ちになる人もいるだろう。

本当に「役に立たない」のかという疑問もわいてくるだろう。

それでもグレーバーの問題提起には、誰もが何かしら腑に落ちるところや、ひっかかる点があるのではないか。

いずれ日本でも訳書が出るだろうから、働き方が問われている今、彼の問題提起をうけて議論が深まることが望まれる。

【出典】
1. “On the Phenomenon of Bullshit Jobs,” https://strikemag.org/bullshit-jobs/
2. D・グレーバー、A・ヴェルメット、芳賀達彦・酒井隆史訳「アナキズム、仕事、そして官僚制 デヴィッド・グレーバーへのインタビュー」『現代思想』46-10(青土社、2018年)
3. 書類まみれの仕事は官僚制と深く結びついていて、現代は「全面的官僚制化」の時代だという。これについては、グレーバー著『官僚制のユートピア』(以文社、2017年)で、あらゆることが透明性を高めるために大量の書類事務にうもれていく状況が記述されている。