専門家が明言する「私がビットコインを買わない理由」

連載ルポ:お金の正体②
海猫沢 めろん プロフィール

ビットコイン登場の背景

——その時代は、インターネットってまったく信用されていませんでしたよね。eコマースがブレイクするためには、電子マネー技術で現金と同じように匿名性が担保されるものが必要なんだと言われていて。

楠 ええ。ところが蓋を開けたら、楽天・アマゾンの寡占のマーケットになって、みんな喜んでクレジットカード番号を入力したんです。その後は、しばらく忘れ去られていたわけですよ、そういう匿名系の電子マネー技術というのは。

——それが突然、2008年、2009年ぐらいにブレイクしたのには何か理由があるんでしょうか?

楠 そこにはきわめて強い政治的な背景があって、2008年はリーマンショックの後なんですよね。リーマンショックでもって、よくわからないいい加減なことをやっている銀行家たちが全然逮捕されずに、結局、経済を支えるために中央銀行はものすごい勢いで、QE1、QE2、QE3と呼ばれる量的緩和をやった。

2008年9月15日。アメリカ、ニューヨークの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻した。

リーマンショックと呼ばれるこの騒動のせいで、アメリカの経済は危機的状況に陥る、そこで取られた政策が「量的緩和」である。

量的金融緩和政策(りょうてききんゆうかんわせいさく、英: Quantitative easing、QE)とは、簡単にいうと、世の中に流通するお金の量を増やすことだ。

なんでリーマンショックで経済がヤバイときに銀行がお金を増やすんだ? 何の関係があるんだ? と疑問かも知れないが、経済のヤバさにはいろいろと種類がある。大雑把に言ってインフレとデフレ——人間の体でたとえると、デフレは貧血、インフレは高血圧だ。

リーマンショックの場合は、デフレが起きそうになったので。お金を増やした。お金が増えると、お金自体の価値が低くなるので、貯め込んでも利子があまりつかない。だから人はお金を使う。結果、お金の循環がよくなる。血管に血をいっぱい流して元気にするイメージだ。

楠 でも、「そもそもお金ってそんな好き勝手に発行していいんだっけ?」と考えた人がいた。ここに対する批評として、プログラムで発行量が決まったお金を国家から切り離された形で生み出すんだというのが、ビットコイン登場のコンテクストです。

なるほど……勝手にお金を刷っちゃう国が信用できないから、中央集権型じゃないシステムでお金をつくろうぜ! ということだろうか。ビットコインの誕生にそんな背景があったとは。

 

お札が紙くずになったときに…

楠 そういう思想性があって、2010年にピザの取引に使われたと言われ、2013年に大バブルがありました。で、やっぱり「現金で持っていたほうが絶対安全じゃん」と思っていたのに対して、キプロス危機で、ユーロ建ての銀行預金で持っていたら潰れかかった銀行の株に置き換えられ、ビットコインで持っていたら何倍にもなっていたというのは相当ショックですよね。「あれ?」みたいな(笑)

2009年10月、政権交代でギリシャ共和国の財政赤字が明らかになったことで経済危機がはじまり、その影響を受けて2013年にキプロスの銀行が経営難に陥った。これがキプロス危機、「キプロスショック」とも呼ばれる事件だ。

楠さんが言うように、国の銀行自体が危機的状況になったので、預金者のお金もふっとんだ……しょうがないのでお金のかわりに、株やらなんやらで補填したという。

リーマンショックといい、オイルショックといい、人はやたらと経済危機にショックを受けるのだが、ショックを受けても仕方ない状況なのである。

考えてみれば国が発行しているお金も、会社の株も所詮は紙切れなのだ。それに価値をつけているのは実は単なる人の思い込みにすぎない。経済危機はそのことを思い出させる。

だが、人は経済の外には出られない。

持っているお金が紙くずになるなら、より多くの人が信用している他のお金に変えようとするのが人間である。キプロス危機の場合は、それがビットコインだったのである。

お金の問題は、それを信用する人間がどのくらいいるか……だが。仮想通貨にとってもそこが本質的なポイントになりそうだ。

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