相続のルールが激変! 新設「配偶者居住権」で大損する人たち

知らないうちにルールがどんどん変わる
週刊現代 プロフィール

住めない家に相続税、固定資産税を支払う人たち…

2000万円相当の自宅は、たとえば1000万円の居住権と、1000万円の所有権に分割される。前者を妻が、後者を子がとることになる。

「つまり配偶者居住権を設定すれば、その分だけ妻が受け取る現預金が増えます。そのため、問題を抱えている家族の場合は、トラブルを招きます」と語るのは、アレース・ファミリーオフィス代表の江幡吉昭氏だ。

一番揉めやすいのが、「再婚した父」のケース。「後妻」が配偶者居住権を主張したときだ。

「血の繋がらない『後妻と先妻の子たち』のトラブルはより深刻になりそうです」(フジ相続税理士法人代表社員・髙原誠氏)

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埼玉県に住む吉田真二さん(68歳・仮名)は、長年連れ添って苦労を共にした先妻に旅立たれ、5年前、再婚した。実は、娘たちは若い「後妻」を快く思っていない。父親の財産の半分を「アカの他人」に取られてしまいかねないからだ。

実際に吉田さんの死後、「居住権」を後妻が主張すれば、どうなるのか。

「後妻は終身、その家に住み続けることができます。本当の親子なら、同居の選択肢もありますが、後妻は基本的に血のつながりのない他人。

子どもたちは相続した資産の所有権を持っているのに、住むことも売ることもできなくなってしまう。この制度は、妻に非常に有利に働く」(前出・髙原氏)

相続税まで支払って所有権を得ても、そこに住むことはできない。しかも、負担はそれだけにとどまらない。弁護士で南青山M's法律会計事務所の眞鍋淳也氏が言う。

「固定資産税です。改正の細則は未知数ですが、居住権者ではなく、所有権者に対してかかる可能性が高い。子どもは、住んでもいない家の所有権のために、税金を負担することになる」

仮に妻が亡くなっても、さらに負担が乗ってくる。

「自宅の居住権を相続することになりますが、その評価額分の相続税が子に課税される可能性があります」(同)

 

一連の問題は、決して「後妻」には限らない。妻が居住権を得たとき、所有権を得た子たち全員が持ってしまうリスクだ。

配偶者居住権で、妻は得する。だが子どもたちはもらえるおカネは減り、家にも住めず、さらに税金負担も増える――。

さらに、血みどろの〝争続〟を誘発しかねない。前出の江幡氏が挙げるケースはこうだ。

「2000万円の自宅マンションと、3000万円の預貯金の計5000万円を、妻と長男、次男の3人で遺産分割する例で考えましょう。

妻(1/2を相続)の配偶者居住権が1000万円だと想定し、長男(1/4を相続)が所有権の1000万円分を相続したとする。すると長男の現金は250万円、次男の現金は1250万円になる。

長男が『母親が住み続けることは変わらないのに、弟ばかり現金の取り分が増えるのはおかしい。自分だけが損している』と遺産分割時に主張しだしたら、揉めに揉める」

前出の眞鍋氏も言う。

「実は兄弟が自宅を巡って争うというのが、最も典型的な〝争続〟のパターンです。居住権にこだわって、自宅を残そうとすると、かえってその後の子どもたちの争いのタネにもなりかねません」