「新潟女児殺害事件」、それでも性犯罪者の監視はタブーですか

元事件記者の悔悟と提案

「繰り返される後悔」

新潟市西区の小学2年生の女児(7)が殺害されて線路上に遺棄された、という痛ましい事件が起きてから間もなく2カ月が経つ。事件発生後にたまたま見たテレビ番組では、コメンテーターらが「なぜ、事件を未然に防げなかったのか」「遺族の無念さを思うと言葉がない」などと言っていた。

本当にその通りなのだが、なんだかしっくりこない。似たような事件が起きるたびに、同じことを何十年間も言い続けているのではないか。私たちはこれまでに、幼い子が犠牲になる事件を未然に防ぐために真剣な議論をしてきたのだろうか。

殺人と強制わいせつ致死、死体遺棄・損壊などの罪で起訴された小林遼被告(23)は女児殺害事件を起こす1カ月前、未成年の女子を連れ回し、書類送検されていた。この書類送検の事案について、マスメディアは詳細を報じてこなかったため、ご存じない方も多いかもしれない。

だが、私は、この事案が気になって仕方がなかった。この事案をもっと慎重に扱っていれば、今回の痛ましい事件は起こらなかったのではないか、と思ったからだ。

 

表面化しなかった「連れ去り事案」

小学2年生の女児が被害者となった事件(以下、「本件」)を起こした小林被告が、その1カ月前に書類送検されていた「未成年女子連れ回し事案」(以下、「連れ回し事案」)を取材するため、私は新潟を訪ねた。

この連れ回し事案について、警察や検察は容疑事実の概要を発表していない。書類送検の事案は多くがそうだ。最近の例で言えば、ジャニーズ事務所の元男性タレントが女子高校生に対する強制わいせつ事案で書類送検された際も、警視庁は事案の概要を公式には発表していない。

これには理由がある。元男性タレントは書類送検後、起訴されずに起訴猶予処分となった。刑事責任は問わない、となった瞬間に、捜査当局は事案の概要を発表しなくなる。容疑者の人権に配慮しているというわけだ。

小林被告のケースも同様だった。連れ回し事案については、刑事処分(起訴か不起訴か処分保留)が決まっていなかったのだ。つまり起訴されたわけではないから、報道各社は連れ回し事案があったことそのものは報じる一方で、事案の中身については詳報しなかった。捜査当局が発表しないので、事案の詳細がわからないということもあるが、報じることが人権侵害になると考え、取材を手控えていたという面もあると思う。

結果として「連れ回し事案」の中身については、一部雑誌やネットメディアが断片的に報じてきただけだった。

「連れ去り事案」の中身

私が確認できた範囲で、連れ回し事案について報じられたものを整理すると、次のようになる。

被害者は女子中学生。住所は特定されていない。小林被告は女子中学生を連れ回し、みだらな行為をした。結果、新潟県警は4月に青少年健全育成条例違反で書類送検した(容疑に、児童ポルノ法違反を追加しているメディアもあった)。

実際に現地で取材をしてみると、依然として事実関係はぼんやりしているが、これまでの報道では見えなかった連れ回し事案の輪郭がよりはっきりした。捜査関係者の話を総合すると、こうなる。

被害者は新潟県内に住む女子中学生で、小林被告とはもともと面識はなく、ネット掲示板で知り合った。その後に待ち合わせ、小林被告は女子中学生を新潟県内や山形県内で連れ回したうえで、みだらな行為をした。女子中学生は自殺願望があったが、小林被告が思いとどまらせた。

これまでの報道にあった通り、新潟県警は連れ回し事案で小林被告を逮捕せず、書類送検にした。この判断は適切だったのだろうか。