ホームレスだったぼくが「お金」について知りたかったこと

連載ルポ:お金の正体①
海猫沢 めろん プロフィール

さすがに過去に株で失敗した例もあるので、投資額は少なめだが、買ったあと、チャートを見ていてものすごい値動きに焦った。なぜこんなにも激しく動くのか……。しかも持っている実感もなにもない。

お金ってなんなんだと改めて考えさせられた……そのあたりの疑問もストレートにぶつけてみようと思う。

話を伺ったのは、楠正憲さん。

ビットコインやブロックチェーンの専門家であり、経済やお金の歴史などにも造詣が深い。現在は「Japan Digital Design」の業務開発部長という肩書で、テクノロジーを使った新しいマネーサービスを作り出している。

楠さんの勤務先は東京駅から10分ほどの、貨幣博物館のすぐそばにあった。このあたりは江戸時代には金座と呼ばれた場所で、金融関係の施設や企業が集まっている。

真新しいビル内の打ち合わせスペースに入ると、珍しいコタツの打ち合わせスペースが……「ここで打ち合わせすると寝ちゃうんですよ」という楠さんだったが、せっかくなのでここで取材をさせてもらうことにした。〔編集部注:インタビューは2018年1月19日に行われた〕

 

お金の起源は物々交換ではない!?

——今日はまず「お金の起源」と「ビットコイン」についてお話を聞かせてほしいんですが。その前に、なぜぼくがお金について調べようと思ったか説明すると、お金が嫌いだからなんです(笑)。

楠:そうなんですか?

——お金で失敗してるから、できればお金と無縁で生きていたいんです(笑)。

ぼくが好きなこういう話がある。

資本家が、島で寝て遊んで暮らしている原住民に「働きなさい」と言う。そうすると「働いたらどうなるんですか?」「私のようにお金持ちになれるよ」「お金持ちになったらどうなるんですか?」「寝て遊んで暮らせるよ」「だったら今と一緒じゃん!」って笑われる。

お金を稼ぐ前に「どう生きたいか」を考えないと、意味がないんじゃないか? ぼくはそう思っていたのだが……。

楠:今はみんな、人を不安にさせることしか言いませんからね。キャリア・デザインが大事だとか。地図に書かれた通りに生きるだけが人生ではないんですが……でも、ちょっと逆に考えてみると、「どう生きたいか」も含めて、居場所を見つけたり、人生の意義を見つけたり、誰の役に立ったりってすごく難しくないですか?

——う、確かに……。

楠:そんななかで、「お金を稼げばそれで生きていけるんだ」という単純化は、きっと多くの人をだいぶ生きやすくはしただろうし、それによってたくさんの人をとりあえず働く気にさせた。そういう人々の方向付けというのは間違いなく影響していると思うんです。それこそが、経済を発展させてきたお金の魔力でもある。

言われてみるとそういう考え方もある。人生に目的がないからとりあえずお金を稼いどくか、というのは主体性がないと思われているけれど、人間が全員主体性を持ってるわけではない。

こういう話も含めて「お金」について考えると人間の生き方の問題も出てくる、このあたりも興味があるのだが……まずものすごく基本的なところ、お金の起源からお聞きしていこうと思う。

ぼくらが子供の頃に教えられたお金の起源といえば、物々交換から始まって、めんどくさいからお金になりましたという話だった。でもいまのお金の本をいくつか読むと、まずその否定から入るものが多いのに気づく。

例えば、ぼくが読んだなかではデビット・クレーバーの『負債論』、フェリックスマーティン『21世紀の貨幣論』、なんかがそうだ。日本で出ている本もおそらくこれらの本の影響が強い。

200

楠:物々交換はアダム・スミスの歴史観ですね。確かにここ10年、20年で貨幣観が大きく変わっていますね。

そういった本は、日本のものも海外のものも、なぜかだいたいヤップ島の石貨の話から始まる。さきほどここに来る前に寄った日銀の貨幣博物館でも、やはりヤップ島の石貨が入り口にあった。

どうしてなのだろうか?