「政経学部」入試で数学が必須に...早稲田の狙いが分かった

気持ちはわかるが、ちょっと心配
週刊現代 プロフィール

「全員、海外留学」だと!?

この30年間で早稲田は大きく変わった。ページ末に『早稲田と慶應の研究』、『早稲田大学統計要覧』などを元に作成した4つのグラフを掲載した。

'87年度、女子学生は全体のわずか16%にすぎなかったが、どんどん増加。'05年には女子学生比率で、慶應を抜いている。30年の間に1万人以上増加し、全体の4割弱を占めるまでになった。

さらに、30年前は、入試の合格者の71%は浪人生であり、現役生は29%を占めるにすぎなかった。それが、'17年度入試の合格者は、全体の7割近くが現役生。浪人生は3割ほどにまで減った。

また、'87年度には、推薦入試、付属校や系列校からの入学者という「無試験組」は全体の17%にすぎなかった。

AO入試の導入、指定校推薦の増加、そして付属・系列校の新設などによって、「無試験組」は全体の36%を占めるまでに増えた。いまの早稲田は、学生全体の4割弱が無試験で大学に入学した学生たちなのだ。

一方で、学費は大幅にアップ。政治経済学部の初年度納入額は、80万4200円から、121万円超になった。

 

大学の特色のひとつだった夜間学部の新規募集は'10年にすべて停止。戦前に建築された政治経済学部の建物が取り壊され、'14年にピカピカのビルに建て替えられた。

かつて学生たちが集った、大隈講堂前で酒を飲む、通称〝隈飲み〟も大学側から禁止の措置がとられている。

大学側もかつてのような「何浪してでも早稲田に入りたい」という特殊な人間ではなく、スマートで器用な学生を増やしたがっているように映る。

そして、華やかで、キレイな「今風のキャンパス」を目指す――。早稲田はかつての「バンカラ」イメージから脱却しようとしてきたのだ。

そして、いま早稲田はこの流れを加速させようとし、'32年の創立150周年に向けて様々な取り組みを行っている。

「世界に貢献する高い志を持った学生」「グローバルリーダーとして社会を支える卒業生」などを育成するとして、「卒業までに100%の学生が海外留学をする」「学部の外国語授業の割合を50%にする」など、およそかつての早稲田らしくない目標を打ち立てている。

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「バンカラ」から、「グローバル」へ――。ライバルに圧倒的な差をつけられ、もう後がない。その焦りの表れが政経の数学必須化なのである。早稲田は政経改革を皮切りに、早稲田全体の復活につなげようとしている。前出・須賀教授が話す。

「いまの世の中、思考のスキルの中に最低限、数学的素養が必要だと考えています。

ビッグデータの時代と言われますが、データそのものは自分たちの身近にある。問題はそれをどう使うか。そのために必要なのが、数学的素養であり、数学が基にある統計学になるわけです。

社会には何が必要で、どうすればそれができるのかを自分で考えなくてはいけない。入試改革は、不確実な世界で解決策を実行できるグローバルリーダーを養成するための一環です」

AIが幅を利かせるようになるこれからの社会では、確かに求められる人材像が激変する。そこに合わせて、教育内容を変化させる意図も理解できる。だが、自由さ、多様さを失った早稲田が、単なる「慶應のできそこない」になってしまうのではないか――。

つい、そんな心配をしてしまう。いったい早稲田が向かう先には何があるのか。