米中貿易戦争でも中国は米国債を売却しないといえるこれだけの事情

表面は脅し合い、水面下は緩やかな管理

中国は貿易減少より資本流出を恐れる

トランブの経済政策の一環として世界的に貿易摩擦が発生している。特に「米中貿易摩擦」の可能性が強まっている。

トランプの今後の経済政策については次の機会に改めて解説するつもりだが、要は、トランプは、関税の引き上げを行い、輸入を減少させ、米国の貿易赤字を減少させようとしている。

経済学では、基本的に関税などの手段で国内市場を保護する管理貿易よりも、輸出入制限を設けない自由貿易の方が望ましい結果をもたらすとされている。世界貿易機構(WTO)の立場と同じである。

 

にもかかわらず貿易摩擦が起こって、自国内の経済が不利益をこうむって来た時の対応には、いろいろな政策がある。

一番に考えられるのは、為替レートの引き下げである。実際、中国は2016年10月に人民元の国際化の目標であった国際通貨基金(IMF)の通貨特別引出権(SDR)の構成通貨の1つに採用された。他の通貨は米ドル・ユーロ・英ポンド・日本円である。

その後は、中国による人民元の国際化の動きは逆行し、人民元の通貨制度における管理も強化され、当局の恣意性が高まった。資本流出を抑えるため資本規制を強化した。

現在の米中貿易摩擦の局面でも、景気の減速懸念もあり、人民元の実勢レートが下がっており、それに合わせる形で、人民元を穏やかに安くしている。

景気減速に対応するため、またインフレ率が鈍化していることもあり、2016年3月以来であるが6月に預金準備率を16%から15.5%に0.5%引き下げた。金利の引き下げは、当然人民元安の方向に作用することとなる。

人民元安になれば輸出は伸びることになる。

しかし、いいことばかりではない。中国が最も懸念している「資本(マネー)の流出」を加速させる可能性も高まる。中国の個人は“基本的に”海外に資産を移そうとする意欲が高い。昨年、仮想通貨取引を全面的に禁止したのも、実は資本流出の防止のためであった。

さらに、資本の流出は株安ももたらす可能性が高い。中国株は、上海株が3000の大台を割り込むなど下落を続けている。通貨安は、この下落を加速させる可能性がある。

上海株は2007年2か月からの暴落、そして2015年6月から16年に掛けての大暴落(チャイナ・ショック)など何回も暴落を起こし、その度、世界同時株安となっている。その再来は避けたいところである。

中国当局にとっては最大の懸念は資金流出なのである。そのため中国当局は、貿易戦争で輸出が抑えられる事態になっても、大きな為替レートの引き下げは起こさせない。“管理”された実勢レートに即した運営を強いられている。