有名学者も脱帽!天皇への「ご進講」そんなことまでご存じとは…

飽くなき知識欲と深遠なる教養
週刊現代 プロフィール

理解力も凄い

さらに、天皇の「知識欲」は意外な分野にまで及んでいる。前出の鈴木氏が話す。

「『若い頃、よく和船を櫓で漕いでいました』とお話しされていました。普通のボートなら体験する機会があるのは分かりますが、櫓を扱うことができる人はほとんどいません。ご興味の幅広さを感じました」

天皇は'09年にも、葉山御用邸前の海岸で悠仁親王とともに、和船での航海を楽しんだ。その際も自ら櫓を用いて船を漕ぐ姿を見せ、周囲を驚かせたことがある。

日本を代表する学者たちをして「参った」と言わしめたのは、天皇だけではない。冒頭で触れたように、皇后もまた、彼らが驚くような教養の深さを披露している。

'10年に「ローマ帝国の物流システム」についてご進講を行った、東京大学名誉教授(美術史)の青柳正規氏(73歳)が話す。

「私は世界遺産について研究を行っているのですが、ご進講を行った当時、富岡製糸場の世界遺産への推薦が本格化した頃だった。

そこで富岡製糸場がいかに素晴らしいかをお話ししたら、皇后陛下から『富岡では明治12年頃、ストライキが起きているんですよ』と教えていただきました。

ご自身でお調べになって、歴史の良くない面についても押さえていらっしゃる。教える側としては『怖いな』と思いました(笑)」

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皇后は聖心女子大学に在学されていた際、英文学を専攻していた。だが、その興味は幅広く、学者も「マイナーな学問」だと自認する分野にまで造詣が深い。

'08年にご進講を行った、東京大学名誉教授(国文学)の久保田淳氏(85歳)は感慨深げにこう話す。

「私のご進講のテーマは『西行と伊勢』でした。講義について両陛下がどのようにお感じになられたかは自信がありませんでしたが、ひと月ほど後の食事会の席で、天皇陛下が皇后陛下に突然『アレを持ってきてごらん』とおっしゃったのです。

皇后陛下が持ってこられたのは古びたノートで、学生時代に西行をはじめとする、日本文学について独学で勉強された際のものとのことでした。何度も読み返されていたのか、ボロボロでした。

日本の古い文学は社会的、経済的な影響が少なく、学問として軽視されがちな傾向がありますが、この分野にご興味を持っていただいているのは、非常に心強く感じましたね」

皇后は専攻する分野ではない西行についても独学で学び、さらにはその後60年にわたり、復習をされていたというのだから驚きだ。

 

また、「講義のプロ」である学者から見て、お二人は知識もさることながら、その理解力において、極めて優秀な「生徒」だったという。

前述の通り、講書始の儀におけるご進講は日本を代表する学者たちが研究者としての威信をかけて、自らの専門の中でも特に研究を重ねている分野の講義を行うのが通例だ。

「数週間前から、何度も推敲を重ねた」と彼らが異口同音に語るように、時間をかけて練り上げられた専門的な講義が行われる。

「私たちがご進講やその後の食事会でお話しする内容は、決して簡単なものではありません。事前にテーマについてはお伝えしますが、資料をお渡しするわけではない。

職業柄、講師として相手が私の話をどの程度理解しているのかは分かりますが、両陛下は100%理解してくださっていました。

食事の席ではお二人とも結構な量のシャンパンやワインを嗜まれていましたが、それでも最後まで私の難しい話を聞き続けてくださったのを覚えています」(前出・青柳氏)