Photo by GettyImages

有名学者も脱帽!天皇への「ご進講」そんなことまでご存じとは…

飽くなき知識欲と深遠なる教養

「講書始の儀」は、天皇・皇后へのご進講を行う宮中行事だ。ここには、日本を代表する学者が招待される。ご進講を行った「先生」たちが明らかにした、お二人の知られざる「教養力」を初公開する。

逆に気遣われてしまった

「あの時の恥ずかしさは今でも忘れません。皇后陛下から『天蚕(緑色の糸をはくカイコ)の皮膚からは結晶のようなものが出ますが、あれは何ですか?』というご質問があったんです。

しかし、専門家であるにもかかわらず、私はその質問に答えられませんでした。どうしていいか分からずにいると、『あの結晶はキレイですよね』とお気遣いの言葉までかけてくださった。本当にその知識には脱帽するばかりで、尊敬の念が大きくなりました」

こう話すのは、秋田県立大学元学長で、同大学の名誉教授(生物有機化学)を務める鈴木昭憲氏(83歳)だ。'09年には研究が評価され、瑞宝重光章を授与された、日本におけるカイコ研究の第一人者である。

鈴木氏は、'06年1月に行われた「講書始の儀」のため皇居に赴いた。そこで「ご進講」と呼ばれる天皇・皇后への講義を行うためである。冒頭の場面は、その後、御所で開催された食事会でのエピソードだ。

鈴木氏はこのご進講の際、「カイコの成長とペプチドホルモン」という自身の専門分野に関するテーマを天皇・皇后に解説していた。

鈴木氏のような日本を代表するその道の権威たちが、「え、そこまでご存じなの?」と、「生徒」たる両陛下の深い教養に脱帽、感服して帰宅の途につく……。このようなエピソードは、枚挙にいとまがないのだという。

 

ご進講とは、様々な分野の専門家や官僚、政治家が天皇などの貴人に対して講義をすることを指す。天皇に対しては月に1~3度ほどの頻度で行われているが、その最大級のものが、毎年1月に御所内の「松の間」で行われる「講書始の儀」。

古くは明治天皇の時代から行われており、歴代天皇が「天皇の立場として、その時代に必要な知識を専門家から吸収する」ために設けられた行事だ。

講書始の儀におけるご進講では、日本の学界の大御所である識者が2~3人招待される。

彼らは、お二人にそれぞれ15分程度の講義を行う。テーマは天皇が自ら決定し、ご進講者は宮内庁の幹部や、内閣を通じて他の省庁からの推薦によって選抜される。天皇がお話を伺いたい「先生」を指名することもあるという。

講書始の儀でのご進講を終えた後の天皇・皇后からの「お礼」に関する逸話については機密事項とされ、一般的にはほとんど知られていない。

だが、本誌がご進講を行った学者に取材を重ねたところ、ご進講から1ヵ月ほど経過してから、講義のお礼として御所へと再び招待され、天皇・皇后とプライベートな食事会を行うのが通例となっていることが明らかになった。

そこでは、お二人と学者がご進講の内容を「復習」しながら、和気藹々と議論を楽しまれているというのだ。