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ソーシャルメディアが生み出す「新貴族」〜ロイヤル・ウェディング考

大西洋を架橋するアフリカの声
池田 純一 プロフィール

イギリス王室と「アフリカ系アメリカ人」

ところで、このロイヤル・ウェディングには、アメリカのトランプ大統領が強く参加を希望していたといわれていた。だが結局、彼は招待されることはなかった。

となると、その場の空気を決定づけたのがカリー首座主教であったことの意味合いも、だいぶ違ってみえる。

このウェディングは、ハリー王子の属するイギリス王室のものであっただけでなく、メーガンが属する「アフリカ系アメリカ人」のものでもあったわけだ。

実際、式の最後には、弱冠19歳のアフリカ系イギリス人のチェロ奏者シェク・カネー=メイソンによる演奏もあり、全体を通じてブラックカルチャーの印象が強く残るセレモニーであった。

容易に想像できるように、イギリス国内でもこの婚姻を好ましく思わない人びとも存在し、その多くはブレグジットを求めたような多文化主義を否定する人びとだとされる。

 

彼らからすれば、単に肌の色の異なるアフリカ人の血がイギリス王室にもたらされるだけでなく、かつては従属下にあったアメリカ人がイギリス王室の一角を占めるようになることを意味する。つまり、「アフリカ×アメリカ」の二重の意味で、イギリス人にとっての脅威であると見なしたいようなのだ。

そのような国内の空気を微妙に察してか、たとえばイギリス公共放送のBBCあたりは、むしろそうした論点をうやむやにするかのように、今回の婚姻が「アフリカ系アメリカ人」にとっての一里塚(ランドマーク)であったことを強調している。

そう言われれば確かに首肯できるところもあり、たとえば、この婚姻の出席者の中にはオプラ・ウィンフリーの姿なども見られた(他には、ジョージ・クルーニー、サー・エルトン・ジョン、デビッド・ベッカム、イドリス・エルバらが列席)。

オプラ・ウィンフリー参列したオプラ・ウィンフリー(中央)〔PHOTO〕gettyimages

つまり、アメリカのブラック・コミュニティの代表的セレブであるオプラも何らかの形でイギリス王室との関わりを築いたことを意味している。大西洋を挟んで大きな文化的経路(パス)が通じたことになる。

イギリス国王という存在

イギリス国王はイングランド教会の首長であるだけでなく、今でも「イギリス連邦(コモンウェルス)」に属する多くの諸国の元首であり、いわばアングロサクソン世界の首長である。

たとえばカナダやオーストラリア、ニュージランドは、いまでも公式にはイギリス国王が元首であり、統治者たる総督=ガバナーは現地におけるその代理人として位置づけられている。

実際、今回メーガンが着用したジバンシーのウェディングドレスにも、イギリス連邦加盟の53ヵ国をそれぞれ象徴する花や植物が刺繍されていた(ちなみに、このウェディングドレスのデザイナーは女性であった。ウェディングケーキのパティシエも女性、ゴスペル聖歌隊のリーダーも女性であり、随所で女性の活躍が目立ったセレモニーでもあった)。

アメリカの独立戦争に懲りたイギリスが、植民地の自治を尊重する方向へと舵を切り替えた結果、カナダなどは独立戦争を経ることなく、コモンウェルス傘下の独立国となった。

(もっとも名実ともに政治的独立を果たすため、コモンウェルスからの脱退を試みようとするオーストラリアのような加盟国もある。このあたりの事情は小川浩之『英連邦』に詳しい)。

英連邦 小川浩之英国、そして過去に帝国支配下に置かれた国々による自由な連合体である英連邦。日本人からは理解しにくいこの組織の成り立ちと現在に迫る。

だからオプラたちアフリカ系アメリカ人が、メーガンを通じてイギリス王室とのつながりが築けたことはやはり大きい。バチカンのローマ法王と良好な関係が築けたことに近いからだ。

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