ある日突然、「虐待」で通報された親子のトラウマ

本当に必要な対策とは何か?
井戸 まさえ プロフィール

「通報者」はシッターと隣人か

そうした経緯を伝えても、児童相談所では子ども家庭支援センターでの記録は共有されていないので、通報があった以上対処をしなければならないと言われた。

「3日前、お子さん、外に出されてなかったですか?」

癇癪を起こした長男が、玄関においてあったゴミ袋をぶちまけたので、掃除をしている間、確かに玄関の外に出した。

「一昨日も長男君は大きな声で泣いてましたね」

一昨日……。Bさんは仕事の打ち合わせで遅くなるため、シッターにお願いをした日だ。

「お兄ちゃんが泣き止みません。どうしたらよいか」とシッターから電話が来た。

Bさんは発達障害児に対しての接し方の教室で習った通りに「パニックになった目を合わさず、クールダウンをするまで待ってあげて」と伝えた。

「そんな!放置するなんて私にはできない。それって虐待ですよね」

Bさんはその会話を思い出し、通報した一人はシッターだと確信を持つ。

〔PHOTO〕iStock

「目を合わさないのは放置ではない」「虐待ではない」と伝えたのに。もしかしたらその言い方がきつかったのだろうか。子育てに自信があるシッターは、長男にうまく対処できず傷ついたのかもしれない。

そのシッターから「Bさんは離婚すべきです。そうしたら私はBさんを全力で支えます」と奇妙なことを言われたことも思い出す。「通報」は思い通り動かないBさんへの嫌がらせなのか。

しかし、虐待と言われた時間に親はいなかったというのになぜ子どもたちは保護されたのだろうか?

 

Bさん夫婦はともに家で仕事をしている時間が比較的多いが、勤務する翻訳会社での打ち合わせは不定期で、裁量労働制のために締切前は昼夜が逆転することもある。

シッターさんを頼んでいる時に、寝ていることだってある。それも「育児放棄」と思われたのかもしれない。

児童相談所の職員は続けて言った。

「1週間前の火曜日の夜、夫婦喧嘩もしてましたよね。夫婦喧嘩も虐待ですよ」

確かに1週間ほど前、夫と些細なことで言い争いをした。