日本は「首相が誰と会ったかわからない国」から卒業できるか

これは、どう見ても異常事態だ
三木 由希子 プロフィール

一方、アメリカの大統領府の入館記録は、訪問者記録として電子データで残っている。

オバマ政権では大統領府の入館記録が公表されていたが、トランプ政権になってすべて削除され、非公開方針となっていたところ、情報公開訴訟で争われ、再び公開されるようになった。

現在公開されている入館記録の一つが、大統領府の行政管理予算局への訪問者記録だ。【5】

記録されている項目には、訪問者の氏名や人数はもちろんのこと、誰を訪問するのか、いつ予定が入れられ、開始時間、終了予定時間、面会の場所などがある。面会等のログにもなっている。

ミーティングのログは別に作られ、大統領府の科学技術政策局のものが一部情報公開請求で公開されている。【6】

一覧表になっているログには、用件、ミーティングの設定者、参加者、日付、開始と終了時間などが記録されている。

重要なのは用件も記録されているところで、一覧表は、ちょうど科学技術政策局長候補者の面接が行われていた時期のもので、実際に面接を行っていたことがわかる。候補者氏名は不開示になっている。局長は今でも決まっていない。

実際に何が話されたのかは、別に記録が作成されていなければわからないが、訪問者記録とミーティング記録があれば、官邸だけでなく各行政機関でもいつ誰が来たのかわからない、などということは起こらないだろう。

 

議員からの問い合わせ、働きかけの記録

何を記録すべきかということで言えば、政官接触の記録作成問題がある。

先日も、名古屋市の中学校で行われた前文科事務次官の前川氏の授業について、自民党衆議院議員の指摘を受けて文科省が授業内容を報告するよう名古屋市教委に求めた問題に関連して、自民党議員からの接触記録を文科省が作成していなかったことが報道された(毎日新聞「文科省 前川氏授業照会 政官接触記録作らず 『不当要求でない』」2018年6月17日)

国家公務員制度改革基本法は、政官接触の記録の作成について必要な措置を講ずることを定めているが、実際の運用は不当な政官接触の記録だけを作成するとされている。

自民党議員からの政官接触は不当なものではなかったので、記録の作成義務はないというのが文科省の説明だ。

この仕組みでは、国会議員などからの接触を記録することによって、行政として接触を「不当なもの」と認定したことになる。記録すること自体が特別な意味を持ってしまうため、よほど悪質なものでなければ記録が作成されない。

国会議員などは選挙で選ばれている公職者として、行政職員とは異なる立場にあるので、国会議員やその関係者からの接触は、それ自体が影響力の行使にあたる。

それがすべて問題なのではなく、不当や違法な影響力の行使が問題になるので、前述のような記録作成基準が出来上がっている。

しかし、本来は影響力の行使に当たる政官接触はすべて記録して、それを公開して不当か否か、国会議員等の活動が適当か否かは有権者が判断し、選挙によって当否を決めればよい、というのが本筋だろう。

そうすれば、記録を作成するときに不当か否かを判断する必要もなくなる。