日本は「首相が誰と会ったかわからない国」から卒業できるか

これは、どう見ても異常事態だ
三木 由希子 プロフィール

もう一つは、ニクソン大統領の1969年6月1日の日程表だ。

日曜日だが、一日のスケジュールが始まった場所、公務に係る電話は市内、長距離の別にわけて、電話をかけたことを示すPと、電話がかかってきたことを示すRに区分されて記録されている。この日はヘリの移動があったため、乗客リストもこのスケジュールのあとについている。【2】

また、幹部職員のスケジュールももちろん作成され、廃棄されずにNARAに移管して永久保存されている。現在の行政管理予算局長のスケジュールが、情報公開請求により一部公開されている。【3】

スケジュールを見ていくと、大統領(POTUS)とロバーツ上院議員と電話とか、この時間にこの人から職務用の携帯に電話がかかってくる予定なども記入されている。

他の日のスケジュールを見ると、この時間にこの人に電話をする、というものもあったりする。

佐川前国税庁長官の日程表がスカスカでしかも1日保存だったのとは大違いだ。

判断や決定をする立場である権力や権限のある者が、いつ誰と会い、誰と話し、どこに行ったのか、どのような会議や打ち合わせなどに出ていたのかは、政府活動そのもの。

記録することで、不適切な接触や影響力の行使が監視されるという、権力に対する適切な抑止を働かせることにもなる。

日本では、昨年12月の行政文書管理ガイドラインで日程表をわざわざ保存期間1年未満と明示したので、首相の日程表があったとしても、短期間で廃棄することは法的に何の問題もない。このガイドラインの徹底を今、政府と与党は推進している。

結果的に、首相を筆頭に官邸幹部、政務三役、幹部職員などは、記録がない、あるいは短期で廃棄することで、何をしていても行政文書で確認ができない、監視が及びにくい環境にあり、たがが外れやすい状況にあると言えるだろう。

 

入館記録やミーティング記録

加計学園問題では、日程表だけでなく官邸の入館記録を1日保存で廃棄しているため、誰がいつ官邸を訪れたのかが、行政文書として残っていないことが明らかになった。

新聞等の首相動静を見れば、だれが首相に会いに来たのかはある程度わかるが、だからよいとはならない。行政文書として残っていないことが、そもそもおかしい。

官邸に入館するには「訪問予約届」が事前に出されているが、これが一日で廃棄されている。筆者は、2018年1月中の10日間分、訪問予約届を情報公開請求して入手して整理してみた。【4】

公開された予約届からわかったことは、ほとんどが各省庁から出されたものだったということだ。訪問先は、首相だけでなく、副官房長官、秘書官、補佐官などさまざま。ときどきどこから予約届が提出されたのかを不開示にしているものがある。

これらが、各省庁や自治体など以外から出されたもので、一部が報道関係で記者会見出席のため、それ以外は表敬的な訪問と思われる。

首相動静に出てくるような国会議員や自民党関係者などは出てこないので、予約届がすべての官邸訪問者で作成されているわけではない。事前届け出がないと入館できない場合、不要な場合がどこで線引きされているのかは不明だ。

いずれもしても、まともに入館者の記録が残される仕組みになっていない。