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ウナギ不足の理由は「海流」にあり! シミュレーションの結果は?

カギを握る「北赤道海流」

ウナギは日本のはるか南のマリアナ諸島沖で生まれ、成長しながら海流を乗り換え北上し、シラスウナギとなって日本にたどり着きます。

ところが近年、日本ではそのシラスウナギの漁獲量が減少しています。ウナギの完全養殖はいまだ市場においては実現していないので、シラスウナギなくてはウナギを養殖することもできません。

かくして「ウナギ不足」が叫ばれるようになりました。その原因には、乱獲や河川環境の悪化などが指摘されていますが、「海流変動の影響もその一因」だとシミュレーションで示した研究が話題になっています。

この研究を『Scientific Reports』誌に発表したのは、JAMSTECのユリンチャン研究員。台湾出身の彼女が、ウナギ不足を心配する記者に話してくれました。

一生で数千kmを回遊するウナギ

──ウナギの生態は謎が多いと言われていますが、どのようなことがわかっているのでしょうか。

ウナギはとてもおもしろい生物です(図1)。

ふつう水棲生物は、川などの淡水にいるものと、海水にいるものに分かれるのですが、ウナギは淡水と海水の両方で生活するのです。

ウナギの一生図1 ウナギの一生

日本や台湾に流れ着く二ホンウナギは、日本のはるか南に位置するマリアナ諸島沖で生まれます(図2)。

親ウナギは、直径1.6mm以下の小さな卵を何百万個も産みます。1日半ほどで孵化した赤ちゃんウナギは「プレレプトセファルス」といいます。目も口もまだできていません。

北赤道海流にのって西へ流され、1週間ほどで「レプトセファルス」に成長します。レプトセファルスは葉っぱのような平べったくてペラペラした体で、海流の流れに乗りやすく、また黒い眼以外は透明な体をしているため敵にも見つかりにくいのが特徴です。

北赤道海流は、フィリピン諸島にぶつかる形で二手に分かれます。北赤道海流に乗ったレプトセファルスも二手に分かれ、南側へ流れたものはミンダナオ海流に乗って南下し、北側へ流れたものは黒潮に乗って北上します。

ウナギの大回遊図2 ウナギの大回遊

黒潮に乗ったレプトセファルスは黒潮の中で成長し、全長5~6cmのシラスウナギになります。

シラスウナギは、体が透明なことを除けば、親とほとんど同じ形をしています。やがて日本や台湾など東アジアの河口に集まり、川をさかのぼって中流や湖などで5年から10年かけて成長します。

そして成熟したウナギは川を下り、再びマリアナ諸島沖へ戻って産卵すると考えられていますが、これについてはまだ謎が残されています。 こうしたウナギの一生の回遊距離は、数千㎞に達します。

──ウナギはそんな長距離を回遊するのですね。はるか南からやってくるシラスウナギの数が減ったことは、どうして分かったのですか?

シミュレーションで、海流モデル「JCOPE2」(Japan coastal Ocean Predictability Experiment2、図3)で過去の海流を再現して、ウナギに見立てた粒子がマリアナで産卵されてから日本や台湾にたどり着くまでを解析しました。

JCOPE2とは、北西太平洋の黒潮・黒潮続流、親潮、中規模渦などの変動を見るためにJAMSTECが開発した海流予測モデルです。観測データをモデルに取り込み融合することで、高い精度で過去の海況を再現し、また海況予測も可能とします。これまでに黒潮大蛇行の予測や船舶の燃費節減に役立てられるなど、確かな実績を誇っています。

私自身もJCOPE2を使って研究していて、その再現性の高さには信頼を寄せていました。

JCOPE2図3 海を精度よく再現するJCOPE2

そのJCOPE2に、私がつくったシラスウナギの動きを再現するプログラムを組み込みました。