データを見れば「誰でも15分で地震予測ができる」ことをご存知か

ラボ・フェイク 第4回
伊与原 新 プロフィール

伊勢田哲治氏が『疑似科学と科学の哲学』の中で、ヴェリコフスキーとウェゲナーの比較を試みている。アルフレート・ウェゲナーは「大陸移動説」の提唱者だ。これは、「かつて地球には巨大な超大陸が存在し、それが分裂、漂流して現在の大陸配置になった」という(現在では常識の)仮説である。

[写真]極地探検家でもあったウェゲナーがグリーンランドで遭難する直前にベルリンで撮られた、最後の写真(Photo by GettyImages)1930年12月、極地探検家でもあったウェゲナーがグリーンランドで死去する直前にベルリンで撮られた、最後の写真(Photo by GettyImages)

ウェゲナーが1915年に『大陸と海洋の起源』を発表したときも、やはり多くの批判にさらされた。当時はまだ地球内部の様子がほとんどわかっておらず、大陸を動かす原動力が何か、説明がつかなったからだ。

現代に生きる我々ですら、大陸がゆっくり移動していることを何らかの実感をもって納得するのは難しい。ましてや100年前の一般市民には、ただの与太話としか思えなかっただろう。

しかし、と伊勢田氏は指摘する。ウェゲナーの大陸移動説は、地質学によって観察されていた事実と非常に整合的であり、原動力という一点を除けば、他の理論と大きな矛盾はきたしていなかった。対してヴェリコフスキーの「巨大彗星接近説」は、観察された事実がそもそも伝説であり、当時確立していた天体力学ともまったく整合性がない。

つまり、「大陸移動説」には、検証に値するテーマとして生き残る要素が、ヴェリコフスキーの説に比べてはるかに多くあったのである。ご存じのように、「大陸移動説」はその後、「海洋底拡大説」と統合される形で「プレートテクトニクス」という新たなパラダイムになった。

現代の地震学、火山学、地質学はすべて、プレートテクトニクスという礎の上に構築されている。地震学者たちによる確率論的地震予測もまたしかり、だ。

と、ここでまた話が振り出しに戻りそうな雰囲気である。こうして議論が堂々巡りになるところを見ると、ヴェリコフスキーとウェゲナーの間で本当に勝負がついたと言えるのだろうかと、つい首をかしげたくなるのだ。もちろん、科学の議論としてではなく、天災に対する人間の心の問題として、であるが。

 

驚異の的中率!?「地震予測サービス」

さて、先ほど私は、「『予知』も『予測』も使いものにならない」と書いた。そこで引っかかった方もいるかもしれない。「週刊誌やテレビでよく取り上げられている、評判の『地震予測サービス』があるはずじゃないか」と。では、最後にその話をしておこう。

有料会員になれば、予測情報のメールマガジンやニュースレターを購読できるという民間サービスはいくつか存在する。「予測」と標榜していても、手法や予測期間の短さから考えて、やろうとしていることは「予知」に近い。

中でもとくに有名なものが二つある。どちらも、国立大学の元教授が立ち上げたシステムだ。「驚異の的中率!」「恐ろしいほどよく当たる!」とメディアで喧伝されているので、ご存じの方も多いだろう。

一つは、主として電波の"異常"を捉えることで地震を予測するというもの。ウェブサイトによれば、2週間以内の地震(M5以上)が予測できるらしい。地震前に電離層に乱れが生じる、地下の破壊によって電波が生じる、ということに論拠を置いているようだ。

もう一つは、国土地理院が地殻変動観測のために全国に設置している電子基準点データを用いるもの。データの"異常"から、数ヵ月以内の地震(震度5弱以上)を予測するという。念のため断っておくが、国土地理院はこのサービスと無関係である。