データを見れば「誰でも15分で地震予測ができる」ことをご存知か

ラボ・フェイク 第4回
伊与原 新 プロフィール

1000年ぶりの「大変動」時代!?

人々の恐怖をあおるためによく使われる「予言」がもう一つある。「日本列島は約1000年周期で繰り返される"大変動"の時代に入った」というものだ。

言い分はこうだ。日本列島周辺では、東日本大震災が起こり、内陸部でも大きな地震が頻発している。この状況は、9世紀の日本と非常に似ている。869年、東日本大震災と酷似した「貞観地震」が東北地方を襲い、878年には関東地方で大きな直下型地震が起きた。そして887年、南海トラフの巨大地震「仁和地震」が発生――。

さらにはそこに、富士山が噴火するという予言を付け加える者もいる。同じく南海トラフ地震である「宝永地震」(1707年)のわずか49日後に、富士山が「宝永大噴火」を起こしているからだ。まさに、前回冒頭で紹介した予言書『月日神示』さながらの"大変動"である。

 

「世界は周期的にカタストロフィに見舞われ、そのたびに再生してきた」というストーリーは、マヤやインドをはじめとする世界各地の伝説に見られるという。もしかしたら、古代の人々にそんなインスピレーションを与えるような出来事が、実際にあったのかもしれない。

こうしたことを考えるとき、私の手は決まって1冊の本にのびる。イマヌエル・ヴェリコフスキーによるニセ科学の大著、『衝突する宇宙』である。

[写真]精神医学者として名声を築きながら、ニセ科学の大著を書くことになった、ロシア系アメリカ人のイマヌエル・ヴェリコフスキー(Photo by GettyImages)精神医学者として名声を築きながら、ニセ科学の大著を書くことになった、ロシア系アメリカ人のイマヌエル・ヴェリコフスキー(Photo by GettyImages)

論旨をまとめると次のようになる。旧約聖書をはじめ、天変地異の伝説は世界中にあるが、その中身には驚くほど多くの類似点がある。それは、実際に繰り返し起きたグローバルな大災害を記録しているからだ。

最初の大災害は、紀元前15世紀、モーゼがユダヤ人を率いてエジプトを脱出した頃のこと。太陽が空中で停止し、海は山のように盛り上がり、石の雨が降った。さらには、大洪水、大地震、大噴火、大嵐が世界を襲う。天照大神が天岩戸に閉じこもったのも、この大嵐を避けるためだったという。

そのメカニズムについて、ヴェリコフスキーが提唱した"仮説"は、奇抜という他ない。一連の大災害の原因を、巨大彗星の接近遭遇に求めたのである。地球の自転が大きく揺らぎ、地球内部から大気まで、破壊的にかき乱されたというわけだ。

この巨大彗星は、紀元前8世紀にもう一度地球に近づいた。ただ今度は、彗星によって軌道を乱された火星が地球に大接近して、紀元前15世紀と同じような大災害をもたらした。このとき巨大彗星の軌道も変わり、地球と水星の間におさまった。すなわち、それが今の金星である――。

「巨大彗星接近説」vs「大陸移動説」

ヴェリコフスキーが天体力学をまったく理解していないことは明白だ。だが、バカバカしいにも程があると感じた方は、一度のこの本をめくってみるといい。膨大な数の伝説の引用で埋められたこの書物には、背筋をゾクリとさせるような魅力が確かにあるのだ。

事実、この本がアメリカで1950年に出版されると、たちまちベストセラーとなり、熱狂的な信者を生んだ。「ニュートンの『プリンキピア』やダーウィンの『種の起源』に比肩する書物」と一部の書評家が絶賛する一方、科学者からは批判の声が上がった。

1960年代に入り、惑星探査によってヴェリコフスキーの仮説の一部(金星の表面が高温であることなど)が正しいことが判明すると、議論が再燃。アメリカ科学振興協会が彼の仮説をテーマにしたシンポジウムまで開催したというから、その影響力は相当なものだったのである。