丸山ゴンザレスが「水上スラム」で飲んだ、世界一不快な液体

クレイジージャーニー裏日記⑪後編
丸山 ゴンザレス プロフィール

マココの正体

まず、マココの教育水準は高い。そもそもナイジェリアは教育水準の高い国である。アフリカのみならず、中東やヨーロッパ、アメリカに仕事で進出している人も多い。

それは、英語を公用語としているだけでなく、高等教育が普及している国でもあるからだ。マココでも、ボランティアの教師たちがおり、子どもたちにきちんと教育がほどこされている。

 

近年ではマココから、公務員や警察、大企業に就職する者も出てきたという。コミュニティの教育水準が順調に高まってきていることのなによりの証拠だ。彼らが教育に力を入れる理由には、主力の産業だけでの暮らしに限界を感じているところがあるからだろう。

教師はすべてボランティアだという


現在のマココは、はっきり言って裕福である。漁師たちは魚を売り、家ではナマズの燻製の内職をする。ダブルインカムの家が多く、この集落が決して貧しいわけではないことがわかる。

「おかげで金持ち喧嘩せずというか、穏やかな人たちが多かった。

内職用の燻蒸施設が各家庭にある
多くの住人たちが漁業で稼ぐ


しかし、この国には彼らにはどうしても超えられない壁が存在している。それは「部族」である。

ナイジェリアの市街地に暮らす大多数がヨルバ族で、マココに暮らしているのは少数派のエグン族。元々は隣国のベナンにいたエグン族は、漁業を中心にして生計を立てていた。豊かな漁場を求めて移住を繰り返し、やがてナイジェリアのラゴス・ラグーンにたどり着く。国境が引かれたのは、そのあとのことだ。

彼らの定住は、これまでは黙認状態であったが、近年になって状況が変わってきた。
エグン族が暮らす場所は。政府にとって再開発したいエリアだったのだ。2012年ごろには政府による強制退去が進み、住人たちのなかには死者も出た。地元の恨みは根深く、政府への不信感にもつながっている。

その一方で、抵抗し続けたとしても、いまの暮らしにいずれ限界が訪れることもわかっている。だからこそ教育水準の底上げに力を入れているのだ。

政府による立ち退き要求に一致団結して立ち向かう。その一方で、将来も見据えて地域の有志によって教育を施していく。ある意味では理想的な共同体のようにも思えるが、それはあくまでひとつの側面であって、まったく別の面もあることが次第に明らかになっていった。

私のような部外者が踏み込んで触れていい場所には限りがある。そこまでの取材だったら、笑顔で送り出してくれたのだろう。しかし、広範囲に集落の実態を調べようとして、縦横無尽に移動したりところかまわずインタビューを重ねていったことで、暗雲が立ち込めた。結論を言えば、予定よりも早く取材を打ち切ることを余儀なくされたのだ。