丸山ゴンザレスが踏み込む未知の空間「ナイジェリア・水上スラム」

クレイジージャーニー裏日記⑪前編
丸山 ゴンザレス プロフィール

ネガティブな情報ばかり

この時点でマココについて持っていた情報は、「地図にも載らないような場所」で「住民が水上に住居を作って不法占拠している」、「占有権をめぐって政府と住民が対立している」といったネガティブなものばかり。

発展に取り残された人たちが、水上ぐらいしか住むことがないので、やむなくそこに住んでいる、という仮説が簡単に成り立つ。昨今、世界中で起こっている「都市の浄化作戦」は、おおむねそういった構造になっているからだ。

21世紀は、都市に人口が集中する世紀とされている。国連広報センターの「世界都市化予測」によれば、2050年ごろには全人口の66%が都市に集まるとされているのだ。主に農村から新たな仕事を求めた人たちが動く結果、都市へと人口が流入する、という。

避けられない現象であり、すでに人口が増加している都市部の再開発は急務である。行政は急ピッチで再開発を進めたいし、そこに生まれるビジネスチャンスに民間企業も参入してくる。巨額の利益が見込める都市の再開発とは、そうやってトップダウンで動き出す。最終的にしわよせを食うのは、開発地域の住民たちだ。

マココもそんな構図に当てはまるのか。ラゴスの街の人々に、マココにどんなイメージを持っているのかを聞いてみることにした。というのも、ラゴスの人口の大部分はヨルバ族という部族で占められており、マココに暮らす民族(エグン族)とは人口構成が異なるからだ(冒頭で触れたタレントのボビー・オロゴンさんはヨルバ族)。

ほかの部族が暮らしているエリアをどう見ているのか、街にいるうちに外側の意見を知りたかった。

 

話を聞いたのは市場。様々なものが売られていた。マココに暮らすヨルバ族のことを聞くはずが、これまでに取材経験のなかった西アフリカだけに、つい別の方向=食に興味がいってしまう。なかでも目を引いたのは不思議な形をした茶色のリングだった。

「これは何ですか?」
「キャットフィッシュ(ナマズ)だよ」

ナマズを燻製にしたものだと店の人が教えてくれた。イギリスの植民地だったナイジェリアの公用語は英語なので、市井の人たちも問題なく会話に対応してくれる。

「ここの人はキャットフィッシュはよく食べるの?」
「そうだよ。毎日食べるよ」
「どうやって?」
「煮付けるんだよ。いろんなスパイスでね」

ナマズは淡水魚である。大量に供給されているということは、どこかで養殖されているのだろう。そして燻製になっているということは、加工工場があるということだ。いずれにせよ、市場や街の賑わいを見ていると、西アフリカで最大の規模をほこる都市には、膨大な人、モノ、カネが流れ込んできているのがわかる。

国民食のナマズの燻製。食べてみたが香ばしくて美味しかった