丸山ゴンザレスが踏み込む未知の空間「ナイジェリア・水上スラム」

クレイジージャーニー裏日記⑪前編

イメージの薄いアフリカの大国へ

ナイジェリアという国をイメージしたときに浮かぶものは何ですか――。日本人にこう尋ねたとしたら、おそらくほとんど返ってくる言葉はないだろう。あったとしても、サッカーが強い国だとか、西アフリカの国だとか、タレントのボビー・オロゴンさんの出身国くらいだと思う。日本人にとって知名度が低いというか、そもそもアフリカの国のひとつぐらいにしかとらわれておらず、特別注目されていないのかもしれない。

では、マイナーな国だからといって貧しくて非文明的なのかといえば、まったくそんなことはない。アフリカは大陸であって国ではない。サファリパークがあれば、大都市もある。なかでも代表的なのが、ナイジェリアの最大都市ラゴスである。

約790万人が暮らし、アフリカ大陸の都市としてはエジプトのカイロに次ぐ規模で、西アフリカでは最大である。

かくいう私も、ナイジェリアに対して特別な思い入れがあったわけでも、ましてや取材対象として追いかけてきたわけでもない。ただ、以前から耳にしていた噂があった。

「地図に載っていない街がある」「水上生活者が数万人規模でいる」。

ワクワクしてしまう噂だ。

 

そんな折、映像作家の友人がナイジェリアに撮影に行った。彼が現地から送ってきた映像を見て驚いた。想像以上に都会であったからだ。彼は「マココ」という場所にも行ってみてドローンを飛ばして撮影しようとしていると教えてくれた。

気になって調べてみると、このマココこそが以前から噂を耳にしていた水上住居で、しかも最大都市のラゴスにあるということがわかった。情報が連動すると、どうにも心をとどめることができなかった。

さっそく、動き出そうとしたところ『クレイジージャーニー』(TBS系)のスタッフからタイミングよく連絡があって、「取材に同行していいですか?」と提案されてしまったのだ。同行者ができてしまったのはあまり気乗りしないのだが、行きたい気持ちには変わりない。取材に赴くことにした。

ただアフリカ、特に西アフリカに行くとなると準備も必要になる。特に最後まで迷ったのがマラリア対策だ。

マラリアは蚊を媒介とする感染症で高熱、嘔吐、下痢を引き起こす。日本国内で専門の病院に行くと、マラリアの予防薬を処方してくれる。ただ、この薬は胃にダメージがくるというか、服用するとどうにも気持ち悪くなるので、アフリカを旅する旅行者の間で「それでも使うべきかどうか」の意見がわかれている。

「刺されないようにすればいいんだ」と、虫刺され予防に力を入れる人もいる。どっちがいいのか判断しかねるところだが、今回は副作用が煩わしく思えたので、「刺されないように予防」派の意見を採用することにした。

用意したのは、ウルトラソン(ULTRATHON)である。チューブに入ったクリーム状の防虫役で。米軍御用達というお墨付きだ。試しに肌に塗ってみるとビリビリと染みる。これでは蚊どころか皮膚が負けてしまうのではないかと思ったが、これぐらい強力ならば大丈夫だろうと納得して出発したのであった。

マココを探してラゴスを歩く

ラゴスに到着した最初の印象は、「都会である」の一言。西アフリカでも屈指の巨大都市だった。周辺国を見渡してもこれほどの規模はない。近代的なビル群の間を行き交う人々の服装は上等なビジネス・スーツだったり、民族衣装をベースにしたような仕立てのよい服。いずれも原色でカラフルな印象だ。

ビル群をビジネスマンが闊歩する
賑やかな印象のラゴス市内

街なかを歩くと、市場や露店が多く、どこも商品で溢れていた。サファリ、貧困、発展途上……そういったステレオタイプのアフリカが、ここではいかに当てはまらないのだな、と事前のイメージの無意味さを突き付けられた感じがしていた。