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「発達障害」の妻との会話が驚くほどかみ合わない

凸凹夫婦の家庭改革メソッド【6】

現代ビジネスの好評連載を書籍化した『されど愛しきお妻様』。おかげさまで売れ行き好調ではあるのですが、「奇跡の夫婦の物語」と捉えられてしまったことが残念と同時に、もっと実践的な内容も盛り込めばよかった、と反省。というわけで、どんな「すれちがい」のあるご家庭にも応用可能な超・実践的スピンオフ連載待望の第6回です。

*バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/series/daisukesuzuki

ほぼ全ての会話が夫婦漫才のノリ

さて、「お妻様と話が通じない」の第2回は、僕の話をお妻様が理解してくれないの方。今回も我が家のありがち会話から見てみよう。

例えばお妻様と映画館に行った後の会話は、こんなことになりがちだ。

「お妻様よ、今日の映画は、総合して点数つけるなら何点だと思う? まあ俺は総合すれば100点だったけど、いくらなんでも犯人が序盤でバレすぎかな。音楽も演出も良かったけどね」

「大ちゃんそれは違うよ。犯人役の〇▽◇×さんって、バイプレイヤーとしてはベテランじゃん。この監督の過去作にも毎回でてるし、その前にもxxとかxxxxととかにも出てたし、ちょっと待ってね」

スマホを取り出し、その脇役の情報をウィキり出すお妻様。

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「いやいや、いま役者の話はしてないでしょ? ベテランなこととネタバレ感あったことは関係ないし、とりあえずお妻様はこの映画、どうだったの?」

「この監督の前作よりはいいんじゃね?」

「じゃなくて、総合点数は何点なの?」

「100点かな」

「君さっき、それは違うよとか言ったじゃん? 総合100点なら俺と一緒じゃん」

「ちょっとちがうんだな~」

「でもいまって、映画の総合点数は何点かって話だよね?」

「そうなの?」

「あんたとはやってられませんわ!」

毎度毎度、こんな感じで食い違う我が家の会話。これが友人たちにとっては面白いらしく「お前んとこは夫婦漫才みたいだな」なんて言われ続けてきたが、ほぼすべての会話がコレって状態が20年近く毎日続いてみろ! 毛が抜けるわ!

とまあ、それがまじめな話でも大事な話でも相談事だったとしても、聞いたことと違うことが返ってくるし、話が食い違う。さらに言えば、こちらが伝えたはずのことを後になって「聞いてないよ」と言われることも多いし、何かお願いしたり約束した筈のことを平然とすっぽかされてしまうことも度々あるときた。

お妻様と話が通じない、指示が通らない、頼んだことも約束したことも守ってもらえない……やっぱりこれは、夫婦漫才なんてお気楽なものじゃない。不定形発達なお妻様と暮らしていくうえでのお困りごとの中でも、かなりの上位ランクなのである。

けれど本連載の骨子は「定型サイドのお困りごとは、不定型サイドの不自由」。つまり僕の話を理解してもらえないというお困りごとの背景には、「お妻様は人の話を聞き、理解し、憶えておくことが苦手などの不自由を抱えている」のだと解釈すべきだろう。

いや、分かります。その不自由、実はめっちゃ辛いんです。というのもこの「人の話をうまく聞けない」という不自由は、僕自身が高次脳機能障害当事者となったのちに散々苦しめられたもの。ここは改めて、僕の実体験からお妻様「たち」の不自由を推察してみようと思う。

 

例えば高次脳が重かった時の僕が、仕事の上で担当編集者からこんなことを言われたとする。

「鈴木さん、今回の原稿ですが、内容は今のお話の通りでいいと思います。で、来週の金曜日が最終入稿日なので、来週水曜日にお会いして打ち合わせできますか? できたらその前に一度軽く書いたサンプルを見せてもらいたいので、それがいつ頃になるのか分かった時点でメールください。今週中だと助かりますね」

ギャアアアア(心のSAKEVI)!

なぜ叫ぶって、叫ばざるを得ないほど苦しいからだ。実は高次脳が重かった時期の僕にとっては、たったこれだけの話が、まったく理解できず、ついていけない内容だった。そして、当時の僕の対応とその後の展開といえば、こんなだった。

「え? 済みません、打ち合わせですか? いつが良いと?」

「鈴木さん僕の話聞いてました? 来週水曜日でどうですかと……」

「えーと(スケジュールを確認し)大丈夫です」

本人的にはなんとかその場はクリア!

と思いきやその週末、担当編集から「サンプルはいつ頃見せてもらえますか?」と催促メールが届いているのを見て、パソコンの前で大々的なパニックに陥る僕なのであった。

ええ!? 締め切り金曜日で水曜打ち合わせでしょ!? まだ一週間あるし、書き始めてもいない。もうサンプル提出!? ありゃ……なんかサンプル書けって言われた記憶が薄っすらあるようなないような……。 

焦って担当に連絡して平謝りすれば、サンプルは来週水曜の打ち合わせに間に合えばいいと言う。だったら初めからそうメールに書いてくれよ!(そのように指示された記憶はない)。

首の皮一枚つながったわけだが、その後も僕の胸の動悸は続き、自己嫌悪と「もうちょっと丁寧に指示してくれないとわからない! 脳壊れた人間舐めんなよ!」という自分でも理不尽だとわかっている苛立ちも抑えられず、もう仕事にも家事にもしばらく手が付けられなくなってしまうのであった。

そして、そんなパニックでハアハアしている僕の背中をゴシゴシ撫でながら、お妻様はこういうのだ。

「大ちゃんわかる。それ、めっちゃ分かるよ。あたしも子どもの頃からずっとそうだったから」

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