6月の東海道新幹線は呪われてでもいるというのだろうか。しかもどちらも東京発上り、新横浜―小田原間でのことである。
3年前には71歳の男が自らかぶったガソリンに火を着け、近くにいた51歳の女性が巻き添えになり命を落とした。これまでの人生の平穏無事のお礼参りに伊勢に参拝するところだったという。
この度は、22歳の男が、隣席の女性たちに刃物で襲いかかり、止めに入った38歳の男性が犠牲になった。
もちろんどんな殺人も許されるものではないが、とりわけこの類のテロリズムがなんともやりきれないのは、ここにはなんの合理性もないように見えるからである。殺された側にはそもそもなんの落ち度もないばかりでなく、殺す方にもなんら得はない。
怨恨でも、物取りでも、性犯罪でもなく、政治や宗教の思想的背景もない。殺された者とその遺族たちは、「なぜ自分/うちの家族が」という問を抱えたまま宙吊りにされる。理不尽としか言いようがないが、理不尽の怖ろしさは、なにより対策の立てようがないということである。
しかし、もしそうだとすれば、われわれはいつか降りかかるかもしれないこの災厄に、つねに怯えつづけていなければならないということになる。家族や自分がこうしたテロリズム巻き込まれはしまいか、家族が、あるいは自分自身が突然こうしたテロリストに変貌しはしまいか、と。
ある日突然、なんらかのかたちでこうした事件の関係者になってしまうことは、誰にでもありうる。しかし、これはあくまで不慮不可避の事故ではなく、事件である。しかも事前に凶器を購入するなど、どれもそれなりに周到に計画されていた。
ならばやはり、未然にその過程のどこかで防ぐことはできたのではないか。起きてしまったときにどうやって身を守るかも大事かもしれないが、それよりも、後発事件を起こさないように、なにかできることはないかを考える方が重要にして有益ではないのか。
たとえばわれわれ一人ひとりが武装して、事が起きたときにはためらわず犯人を一個の獣として駆逐するのが前者ならば、事件に至るまでの犯人の動機の形成を探り、同じようなプロセスが生じないようにするのが後者である。しかし果たして、この理不尽な犯罪に、われわれが理解できる余地などあるのだろうか。知るべきは彼らの内面、彼らの動機である。
まず、以下のつぶやきを先入観なしで読んでもらいたい。ここから、どのような性格、どのような内面が読み取れるだろうか。
1 自分ひとり全く変わっているような、不安と恐怖に襲われるばかりなのです。自分は隣人と、ほとんど会話が出来ません
2 俺以外にこんな奴はいない だから誰にも理解されない
3 私は自身の容貌の可笑しさも知っている。小さい時から、醜い醜いと言われて育った。不親切で、気がきかない。それに、下品にがぶがぶ大酒を呑む。女に好かれる筈は無いのである。私には、それをまた、少し自慢にしているようなところも在るのである
4 顔以外にも女性に嫌われる要素がたくさんありますから、どんなに欲しくても彼女はできません
5 好かれる時期が、誰にだって一度ある。不潔な時期だ
6 人生にはモテ期が3度あるらしいけど、俺のモテ期は小4、小5、小6だったみたいだ
7 友はみな、僕からはなれ
8 やはり、何もかもが私の敵です/味方は一人もいない
9 学校で作る私の綴方も、ことごとく出鱈目であったと言ってよい。私は自身を神 妙ないい子にして綴るように努力した。そうすれば、いつも皆にかっさいされるのである。剽窃さえした。当時傑作として先生たちに言いはやされた「弟の影絵」というのは、なにか少年雑誌の一等当選作だったのを私がそっくり盗んだものである。先生は私にそれを毛筆で清書させ、展覧会に出させた。あとでひとりの生徒にそれを発見され、私はその生徒の死ぬ事を祈った
10 親が書いた作文で賞を取り、親が書いた絵で賞を取り、親に無理矢理勉強させられてたから勉強は完璧 俺の力じゃないけど
11 そこで考え出したのは、道化でした
12 いい人を演じるのには慣れてる みんな簡単に騙される 大人には評判の良い子だった大人には
13 だいいちに私は私の老母がきらいである。生みの親であるが好きになれない
14 もし一人だけ殺していいなら母親を もう一人追加していいなら父親を
15 刺す。そうも思った
16 死ねよ
17 生まれて、すみません
18 否定されることで自分を維持しているのだと思います/つまり、悪いのは俺なんだね