「一生薬を飲み続けなければならない」人などほとんどいない

私的「減薬・断薬」放浪記【最終回】
上原 善広 プロフィール

減薬派は保険適用、断薬派は自費診療

ともかく、いったん睡眠薬や精神薬を始めてしまったら、どこかで気づいて止めるしかない。しかし減薬・断薬のクリニックといっても、実際にはさまざまだ。

もっとも多いのは「あくまで薬を減らすだけで、完全に断薬まではしない」という減薬派のクリニックだ。こうしたクリニックは、保険が使える。最近、減薬がブームとなっていることから、全国的に増えているようだ。

また減薬・断薬派の医師であっても、保険が使える病院と、自費診療の病院に分かれる。

これは医師によっては「国民皆保険」という日本の制度に疑問をもち、保険制度に縛られない自由で先進的な治療がしたいという理由があるのだが、前提として「どうやったら病院や薬の世話にならず健康でいられるか」を医師が患者と模索してアドバイスするのだから、自費診療でないと成り立たないのだ。国民皆保険制度の下では、減薬しながらでも一人一人の患者には、長く通い続けてもらわないと成り立たない。

だから減薬派は保険適用、断薬派は自費診療に大きく分けることができる。

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ただし、田島治医師のクリニックのように、保険が使えるのに断薬も勧める病院もある。田島医師は薬理学を専門とする大学教授だったので、もともと患者の診察が主たる目的ではなかった。そのため営利追求よりも「臨床は研究実践の場」としていた経緯があるためだ。

この田島医師もユニークだが、断薬を勧めることができる医師は皆、押し並べてユニークな人が多い。医療界の潮流とは真逆を平気でいくことができる、強い決断力と推進力があるからだろう。

日本の断薬はまだ始まって間もない段階だから、今後は生活保護や低収入に陥っている人の断薬が課題となるだろう。断薬と自立した生活は、実はイコールでもあるからだ。

 

ただ「医療費の削減」は、さまざまな意味で製薬会社と医療界のマーケットの縮小を意味しているから、なかなか一筋縄ではいかないだろう。さまざまな個人営業のクリニックが乱立している現在、私たちは内海医師の指摘する通り、素人目でも良いからとにかく情報を集めて対処していくしかない。

それは例えば、インフォームドコンセント(説明と同意)にしても、当の患者や家族側に知識がなければ、結局は医師の言いなりになってしまうからだ。とくに診断が曖昧な精神医療では、他科よりも、さらに患者自身の知識と〝生き方〟が問われることになる。

精神医療の世界に限らず、自分の身は、医師や薬が守ってくれるのではない。自分自身で守っていくしかないのである。