「半分、青い。」は、日本の衰退を教えてくれるドラマだ

時代の「反面教師」として
井戸 まさえ プロフィール

ちなみに『エースをねらえ!』は、山本鈴美香のスポーツ漫画。1973年〜1975年、1978年〜1980年まで『週刊マーガレット』で連載されたものだ。

原作漫画には、1970年代当時に活躍していた実在選手たちのエピソードも随所に盛り込まれている。ビリー・ジーン・キング夫人は海外で岡ひろみが最初に闘った相手として大きな位置を占める。

時折しも『Battle of the Sexes』の公開が間近だ。当時の女子テニス選手に与えられた賞金は男子の8分の1ほどに過ぎず、男女の賞金格差はますます大きな問題になっていた。

1973年9月、ビリー・ジーン・キング夫人は当時55歳になっていた往年の男子選手、女性差別主義者を公言するボビー・リッグスと対戦する。キング夫人はこの戦いに勝利し、女子テニス界は男子と同様、発展して行くきっかけとなる。

まさに団塊ジュニアが生まれた時代に行なわれた戦いの熱は、日本へまで伝わることはなかった。

むしろ、1990年代を過ぎても覚醒しない社会。「半分、青い。」で鈴愛の後釜として登場するメイド姿の双子の「メシアシ」(=飯アシスタント)を見る度に、双子の姿はご飯を作り続ける女性たちが没個性に押し込まれる様を象徴するようで、苦しくなる。

 

「半分、青い」とLGBT、ジェンダー

鈴愛の同僚であった「ボクテ」はゲイである。

昨今のLGBTへの理解を考えれば、放送されている内容はすんなり受け入れられるものではあるが、30年前となるとまだまだ偏見もあったことだろうと思う。

ボクテは母からの手紙を受けとる。

「誠さん お元気ですか? 今日は折り入ってお話があります。お父さんの病気は長引きそうで なんとか藤堂呉服店をあなたに継がせたいと思っています。あなたももう大人なんだから いいかげん ゲイとやらも漫画とやらも やめて ウチに戻って来たらいかがでしょうか?着物はあなたも嫌いではない訳ですし いいお見合いの話もありますよ」

ボクテはこれに対してひとりつぶやく。

「お母さん。漫画家はやめられても ゲイはやめられないんだよ。ゲイは職業じゃないからね」

お世話になった秋風先生を裏切ることとなったとしても、東京に居続けなければ自分は生きて行けない。ことの深刻さに対してはさらりと過ぎた回ではあるが、ボクテは相当な覚悟をしていたはずである。

一方で、律を取り合う形になった清を鈴愛。この描き方はステレオタイプである。

清は平たく言えば、女性同士で最も嫌われるタイプ。鈴愛を見てきた律が、一目惚れとはいえ束縛型で嫉妬深い清を選ぶのか全くわからない。

しかし往々にしてそうしたことは起るのである。

ある意味、ドラマの中で最もリアルな設定であるとも言えるが、同性に嫌われるより、好きな人をゲットした方が幸せ的立ち回り、振る舞いを清はするのである。

その価値基準も程なく崩れることを伝えたいところだが。