「はやぶさ2」のイメージ図/Photo by JAXA

このままでは日本が、「宇宙資源」戦争でズルズル敗北を重ねる可能性

新たな「大航海時代」の幕開けを前に

6月27日、「はやぶさ2」が無事、小惑星リュウグウに到着した。だが、そもそも「小惑星」とはどんなものかご存知の方はどれだけいるだろうか?

実は小惑星は「資源」のかたまりである。地球では希少な「レアメタル」がふんだんに含まれる。

このような「宇宙資源」をいかに獲得するかが、今後の国家間の経済的な繁栄を左右しかねない。日本はこの新たな「大航海時代」をリードできるのだろうか? JAXAシニアフェローの川口淳一郎氏が解説する。

「はやぶさ2」がリュウグウに到着

6月27日に、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの上空に到達しました。

「はやぶさ2」は、初代「はやぶさ」の後継機として2014年12月に種子島宇宙センターから打ち上げられ、3年半におよぶ航海を経てリュウグウにたどり着いたのです。

これから2ヶ月程度をかけてどこに降りるかを調べてリュウグウに着陸、さまざまな観測データを地球に送ってくれることになっています。2019年の後半にはリュウグウを出発し、2020年末に地球に帰還します。リュウグウの貴重なサンプル(試料)を、地球に届けてくれることでしょう。

小惑星リュウグウにタッチダウンを行う/Photo by JAXA

皆さんは、こうした宇宙開発に、どのような感想をお持ちでしょうか。莫大な費用がかかりながら、具体的な実りは少ない夢とロマンの世界、そう考える向きもあるかもしれません。

宇宙開発は、本当に夢とロマンの世界だけなのでしょうか。

「宇宙不動産屋」が増加中

アメリカでは2015年11月に、オバマ前大統領が宇宙資源に関する法案にサインをしました。そこには、「アメリカ市民が宇宙の資源を採掘した場合はこれを占有し、所持し、輸送し、使用し、売却する権利を与えられる」と定められています。これは国際社会に諮って同意を得たものではなく、アメリカがまったく独自に作った法律です。

これが意味するものは何でしょうか?

 

宇宙資源に関する国際法としては、「月協定」と「宇宙条約」があります。

アメリカは月協定に批准していませんが(日本も同様です)、このアメリカの法律は、月協定に準拠した内容になっています。実は、月協定では、先験的な貢献をした国に応分の権利が認められると書かれているので、矛盾はしていないのです。

また、“宇宙の憲法”ともいわれる「宇宙条約」では、宇宙空間における「土地」は、国家による取得が禁止されているものの、「資源」については何も禁止されていません。

そこでアメリカは自国に有利な解釈をして法律を作り、宇宙資源の活用で他国に先んじようとしているのです。

「はやぶさ」が世界に伝えたメッセージ、それは、「宇宙の資源は地上に持ち帰れる」ということ。「はやぶさ」帰還後、欧米に次々と「宇宙不動産屋」ができているのです。

2016年の4月には、プラネタリーリソーシズ社と、ディープスペースインダストリーズ社という2つの企業が、宇宙資源のビジネスを始めると発表しました。この2つの企業は、どちらも小惑星からの資源採掘を目指して設立されたアメリカのベンチャーです。欧州の小国ルクセンブルクは、アメリカに追随する法整備を行い、こうしたベンチャー企業を積極的に誘致しています。

宇宙資源の活用は、日本ではあまり考慮されていませんが、非常に現実的な話なのです。