凶悪犯罪続発!アメリカを蝕む「非モテの過激化」という大問題

テロにも発展。その名は「インセル」
八田 真行 プロフィール

強烈な女性嫌悪

2015年10月にはオレゴン州の短大で、26歳の学生が9人を殺害したあげく自殺したが、この犯人も現場に遺した犯行声明でロジャーの事件に言及し、ガールフレンドがいないことを犯行動機の一つとして挙げていた。

2017年12月にはニューメキシコ州の高校で2人が殺され、犯人も自殺したが、この男は「エリオット・ロジャー」を名乗って掲示板に書き込みをし、ロジャーへのシンパシーを表明していた。今年2月にもフロリダ州の高校で乱射事件があり、17人が殺され多数が負傷したが、この犯人も「エリオット・ロジャーは不滅だ」などとネットに書き込んでいたという。

エリオット・ロジャーの事件後は、犠牲者の友人らによる追悼式も行われた(photo by gettyimages)

モテるとかモテないというとなんだかくだらないことのように聞こえると思うが、すでにインセルの影響で何十人も死んでいる。インセルはまごうことなき「危険思想」なのである。

ところで、なぜインセルはチャドやステイシー、ノーミーを敵視するのだろうか。特定の相手に、実際にこっぴどく振られたとか相手にされなかったとかで敵意を持つというのならまだ分かるのだが、インセルの憤怒は多くの場合、自分と必ずしも関係の無い女性全般、あるいは社会全般に向けられている。

筆者もしばらく理解できなかったのだが、ようするにこういうことではないかと思う。

世の中の女性は軽薄で愚かなので、金や権力のあるイケメンに惹かれるばかりで、自分のような風采の上がらない、社会的地位もない男は相手にされない(に違いない)。自分に魅力がないのは遺伝子の問題で、自分に責任はない。

そしてセックスは基本的人権であって、それを阻む女性や、女性の権利を声高に主張するフェミニズムの横行はインセルにとって深刻な人権侵害だ。そもそもこの社会は、チャドやステイシーに有利なようにルールがねじ曲げられていて、インセルに勝ち目はない。インセルを抑圧する社会を打破するために、インセル革命が必要なのだ、と……。

後述する通り、インセルにはドナルド・トランプの支持者が多いらしいのだが、それもこのような反フェミニズムという文脈で理解することができよう。