〔PHOTO〕gettyimages

大阪北部地震「ブロック塀倒壊」で問われるべき「もう一つの責任」

児童生徒の視点を忘れていなかったか

2018年6月18日の大阪北部地震では、高槻市立寿栄小学校でブロック塀が倒れて児童が犠牲となった。

このブロック塀は建築基準法施行令に違反していた。すでに高槻市長は法令違反を認めて謝罪している。行政の法的責任は免れないが、もう一つの別の責任が問われなければならない。それは、教育現場が果たすべき責任である。

ちょうど10年前の2008年6月18日に公布された法律が、重要な問題を提起していることをご存知だろうか? 大阪の弁護士・大前治氏が解説する。

 

市長だけでなく学校と校長も義務を負う

あらゆる建築物は建築基準法などの法令の規制を受ける。法令違反のブロック塀を放置することは、その設置者に法的責任を生じさせる。今回の件では、学校や校長ではなく高槻市が責任を負うことになる。

しかし、それだけでは済まない。学校の建築物は、児童生徒の安全を確保するために、ほかの法令の適用を受ける。学校や校長は、そこから生じる責任を果たさなければならない。

その代表は、学校保健安全法である。児童生徒や職員の健康と安全確保を目的とする法律であり、学校施設の安全について次のように定めている。

【学校保健安全法】
・学校設置者は、児童生徒の安全確保のため事故や災害による危険を防止できるよう施設の整備など必要な措置を講ずること。(第26条)
・学校は、施設の安全点検、児童生徒の通学を含めた指導等について「学校安全計画」を策定し実施すること。(第27条)
・校長は、学校施設に安全確保上の支障があるには、遅滞なく必要な措置を講じ、又は学校の設置者に対してその旨を申し出ること(第28条)。
〔PHOTO〕gettyimages

さらにこの法律の施行規則は、学校設備について「日常的な点検」「環境の安全の確保」を学校に求めている(学校保健安全法施行規則29条)。

これらの規定は10年前に新設された。従来の学校保健法を大幅に改正して、名称も学校保健安全法に変更して公布されたのが、地震のちょうど10年前となる2008年6月18日である。

それまでは主に健康診断や伝染病予防についての法律だったが、事故や災害にむけた安全対策が新たに盛り込まれた。そして、学校設置者(県や市など)だけでなく学校や校長の義務が初めて明記されたのである。

背景には、前年の能登半島地震(2007年3月25日)や新潟県中越沖地震(同年7月16日)などの地震多発があった。特に中越沖地震では、国公私立の合計297校で施設損壊の被害が出た(平成20年「防災白書」より)。その教訓をふまえた法律改正である。

この法律が「学校の安全」を掲げてから今まで、東日本大震災を挟んだ10年間に教育現場は何をしてきたかが問われている。