地方を「助けるフリ」をする、地方創生とアベノミクスの根深い欺瞞

AI投資の前にやるべきこと
山下 祐介 プロフィール

政府はもはや、生まれてくる子どもたちがどんどん縮小しているという事態には向き合わず、「2020年までの3年間を生産性革命・集中投資期間とし、大胆な税制、予算、規制改革などあらゆる施策を総動員することとした」のだという。

第4次産業革命をもたらすために経済産業基盤に巨額の投資をし、各種現場のデジタル化と生産性向上を目指すのだそうだ。

筆者はこうした「未来投資戦略2018」の背後に、こんな奇態な思想を見る。

人口は減ってもよい。ただ経済が持続すればよく、そのためには絶えずイノベーションが起きる環境が整えばよい。それでこの国は成り立つのだと。

いやいや馬鹿を言ってはいけない。経済はAIやロボットが作るのではない。大切なのは人間だ。人間が生産し、消費してはじめて経済なのである。経済は人間の経済であり、イノベーションは人間のためのイノベーションでなくてはならない。人間がいて国家は成り立つのだ。

その人間がこれから次々と消えていく。このままでは人間がいなくなってしまう。イノベーションや生産性の前に、この事態こそ私たちは取り組まなくてはならない。そしてそれが、地方創生の本来の課題設定だったのである。

そんな大事な国民の課題をただ触れただけにして素通りし、おかしな政策を現実に作り上げ、国民にさらなる負担を求めている。しかもそれを、この国の総理が世界に向けて堂々と自信ありげに語っている。

これはきわめて異常な事態である。私たちはこの異常事態をきちんと認識しなくてはならない。サラリーマンが飲み屋で一席ぶっているのとは全く違う次元の話なのである。

〔PHOTO〕iStock

地方が「面白いこと」の犠牲になる

筆者は、地方創生を題材にこれまで、いくつかの政策批判書を重ねてきた(『地方消滅の罠』『地方創生の正体』『「都市の正義」が地方を壊す』)。

これらを通じて警告してきたのは、私たちの国家・日本は人口減少問題をはじめ、今大変危機的な状況に立たされているのにもかかわらず、それに対処しているようなふりをして、まったく別なことにこの国の大切な資源を投入しようとする、そういう政治・行政の暴走が現実にはじまりつつあるということであった。

人口減少というこの重要な課題を振りかざして国民を刺激した上で、話を意図的にそらしながら、自分たちがやりたい政策や事業をただ実現するためだけに利用している。

それが今実際に進んでいる地方創生の根っこにある政府の姿である。ここには、このところ加計学園の獣医学部新設で問題となった国家戦略特区も含まれている。

そして実はこうしたことは、東日本大震災・原発事故の復興の現場では先行して起きてきたのでもあり(拙著『「復興」が奪う地域の未来』および本誌の拙稿も参照「福島原発事故から7年、復興政策に『異様な変化』が起きている」)、また筆者はそうした暴走の別の側面を、このところまた再燃しているモリカケ問題でも確認してみた

 

だがおかしなことは、もっと別の形でも起きているように感じる。

安倍政権を通じて、面白いこと、かっこいいこと、でかいことができればよいと、政治・行政全体がそういうことになってはいるのではないか。

さらにこうした風潮は、産業面をこえて、労働政策や、教育の問題など、私たちの暮らしの間近や、子どもたちの未来にまで深く広く影響を及ぼしつつあるようだ。

私たちは今の日本の政治をめぐる状態を甘く見ず、適切に事態を批判して、適正な政策形成機構へと日本の政治・行政が少しでも戻るよう、努力し続けなくてはならない。

著者もまだあきらめず、警告をつづけてみようと思っている。