地方を「助けるフリ」をする、地方創生とアベノミクスの根深い欺瞞

AI投資の前にやるべきこと
山下 祐介 プロフィール

アベノミクスで人口は増えるか

さて、もちろん人口減少問題、さらにはそれを引き起こしている東京一極集中の問題が、政府として素通りしてよいようなものなら、その内容をすり替えてもそう問題はない。

だが、政府自身が当初示したように、「人口減少への対応は、「待ったなし」の課題」(長期ビジョン8頁)である。

いやまたそれでも、アベノミクスで人口減少が解消し、日本の人口が人口維持へと転換する見通しがつくのなら、それはそれでよいわけだ。

しかし、産業経済政策で人口問題を解決するというのは、論理的にはまったく不合理なのである。

それどころか前掲の拙著で指摘しているように、現在、地方創生で進めている地方仕事づくり/産業政策は、かえって地方の人口を減少させ、出生率を押し下げることにつながりそうだ。

現実にこの間、出生率に関して言えば、2005年を底にして徐々に回復していたものが、地方創生が開始された2016年、2017年に再び低下をはじめているのである。

まじめにその回復を目指していれば、出生数増への転換まで進んでいたかもしれないのに、である(図2参照。ただし、産む女性の数が減り続けているので、出生数そのものは一貫して減少し続けている)。

図2:日本の出生数と合計特殊出生率の推移(内閣府HPより)
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「人口減少より経済成長」が政権の本音

しかし筆者が最も問題だと思うのは次の点にある。

現在の政策が、ただ人口回復を産業づくりでという「読み違え」で失敗しているのならまだよいのだ。

だがもしかすると今の政権は、人口減少問題を利用しただけで、真面目に取り組むつもりなどはじめからなかったのではないかと、そう疑える節が次第に随所に見られるようになってきたことである(拙稿「政府は『人口減少』に無関心?地方創生が地方を壊す未来がやってくる」も参照)。

 

そして筆者はつい最近、さらにその疑念を深めることとなった。それは首相官邸のウェブサイトで公開されたある動画を見たときのことである。

官邸では「アベノミクス」をどう説明しているのだろうとサイトを閲覧した際、アベノミクスの説明から誘導されていった「未来投資戦略」のページの中で、熱心に語る安倍総理本人の言葉に驚いてしまった。

総理はそこで、国民のみならず、全世界にも向けてこう発言しているのである。動画の最後にある台詞だ。

「人口が減ってもイノベーションによって成長できるのだという、第一号の証拠になることを日本は目指しています」(未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革-(YouTube首相官邸チャンネル)より)

まさかとは思ったがやはりそういうことだったのである。

安倍政権にとって、人口減少からの回復などはどうでもよいことなのだ。

経済成長さえできればよいのである。

そして経済成長は、人口がこのまま減り続けても、イノベーションで達成できるのだという。

そういう認識で描かれているものとして、この平成30年6月15日に新しく策定されたばかりの政府の「未来投資戦略2018」を読んでみれば、ゾッとするのは筆者だけではないはずだ。