地方を「助けるフリ」をする、地方創生とアベノミクスの根深い欺瞞

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山下 祐介 プロフィール

「ローカル・アベノミクス」?

問題は日本の人口減少なのだから、その問題解決に汗をかくのは全国民のはずだ。

そして大切なのは仕事や経済ではなく、人口のあり方――とくに結婚や出産、子育ての問題――になるはずだ。仕事や産業はあくまで人口回復のための手段にすぎない。

では、なぜ全国民の問題が地方のものに、そして人口問題が産業・経済の問題に印象づけられるようになってしまったのか。

それはもちろん、実際の政府の地方創生政策・事業そのものが、当初の目的を大きく外れて、あるところから別のものへと転換してしまったからである。

詳しくは筆者の近著『「都市の正義」が地方を壊す 地方創生の隘路を抜けて』をご覧いただきたいが、簡単にいえば、それこそ安倍政権へのおもねりや忖度がそう変えた――そう表現してよさそうなことが地方創生の背後では起きていたのである。

〔PHOTO〕iStock

地方創生の事実上の出発点となった「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」および「同総合戦略」の発表(平成26年12月27日)から約半年後の平成27年6月30日に、「まち・ひと・しごと創生基本方針 2015-ローカル・アベノミクスの実現に向けて-」が閣議決定されている。

すでに長期ビジョンがあり、それに対応して総合戦略が立てられているのに、そのあとに基本方針が出てくるというのは、どう考えても奇妙である。

そしてその意図を考えてみるなら、この基本方針にある副題、「ローカル・アベノミクスの実現に向けて」が気になる。

 

これはやはり、地方創生に「アベノミクス」の語を付け加えたかったからなのだろう。「アベノミクス」という、個人崇拝ともいえるこの政策用語を強調すること、それがこの基本方針策定の目的の一つであったと考えられる(その他、この転轍の事情はもう少し複雑だが、詳しくは前掲の拙著を参照)。

そして実際にこの平成27年あたりから、行政文書全体に安倍総理への個人崇拝的な臭いのする文言が滲み出てくるのであり、この点は以前本誌でも東日本大震災の復興政策の分析を進めた際に、「総理御発言」などという言い方が現実にあらわれていた様を取り上げておいた(拙稿「この国はもう復興を諦めた? 政府文書から見えてくる『福島の未来』」)。

地方創生は本来、人口減少=東京一極集中対策としてはじまったものである。

ところがそこに官邸や内閣府周辺の非常に強い意向が働いて、その内容が地方仕事づくり=ローカル・アベノミクスの推進へと変えられていった。

しかもそれが地方創生スタート後の比較的早い時期に行われたので、国民は地方創生がそもそも何を目指したものかよく分からないまま、現実に動いた事業に引っ張られて、冒頭に指摘したような印象を持つようになってしまったわけだ。