大ブームの「認知症保険」本当に使えるの…?

加入したことも忘れてしまったら…?
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家族の介護費用はたしかに心配だ。だが、それ以上に怖いのが、認知症になった家族が思わぬことで他人にケガをさせたり、物を壊したりして、賠償責任を問われることだろう。なかには多額の損害賠償請求を受けることも想定される。

多額の損害賠償リスクが

'07年、愛知県大府市のJR共和駅構内で、認知症患者の男性(当時91歳)が線路に侵入し、電車にはねられて死亡する事故が発生した。

JR東海は、事故による振替輸送費や人件費などの損害を受けたとして、家族に対して損害賠償を求める訴訟を起こした。

一審では別居する長男と同居し介護していた妻(当時85歳)に監督責任があるとして、2人に対して約720万円の損害賠償を命じた。二審でも妻に約360万円の支払いを命じている。

最終的に'16年、最高裁で家族への賠償は棄却されたが、今後、認知症患者が増え、事故が多発すれば、家族が責任を取らされる可能性は十分ある。

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それをカバーしてくれるのが損保型の認知症保険である。いわゆる「個人賠償責任保険」だ。認知症保険は本人が加入するのに対して、個人賠償責任保険は、親が高齢の場合、子供が親のために入ることになる。

FPの横川由理氏が語る。

「個人賠償責任保険とは、家族のだれかが第三者に損害を与えた際にその賠償金を補償してくれるものです。

この保険はほとんど単体では発売されておらず、自動車保険、火災保険、クレジットカードの特約として付帯しています。補償額の上限は高く、1億円から無制限まで。

保険料は年間約2000円と手ごろで、しかも一人が入っていれば家族全員がカバーされる。私は車に乗っていないので、火災保険の特約としてつけています」

 

弁護士の星野宏明氏は、「介護をしている人ほど、この特約はぜひともつけておいたほうがいい」と言う。

「たとえば認知症の親と同居している場合、家族が監督義務者となります。そのため、きちんと監督しないと、何かあった場合、賠償責任を負わされる可能性が高くなります。

逆に言えば、親の介護を放棄すれば、賠償責任を負わされるリスクは下がる。矛盾しているようですが、介護に熱心な人ほどきちんと保険に入っておかないと、予想もしない多額の金額を請求され、悲惨な目に遭うかもしれません」

たとえ認知症の両親と離れて暮らしていても、介護に関わっていたり、仕送りをしていたりすると、監督責任があると見なされ、責任を問われる可能性がある。

そのため、これまでは同居している家族が主な対象だったが、ここ2年で大手損害保険会社はそろって対象を拡大。離れて住む認知症の親が事故を起こし、法的責任を負えない場合には、別居の親族でも補償の対象となるようになった。

自動車保険や火災保険に付ける場合、保険料は年間1000~2000円程度なので、故郷に認知症の両親がいる人などは、ぜひつけておきたい。