日大・解雇された非常勤講師がついに大学を提訴へ

もう一つのくすぶる火種

アメフト部の危険タックル問題への対応で、ガバナンスの欠如が指摘されている日本大学。その日大で、今年3月末に数十人の非常勤講師を一方的に解雇した問題がくすぶっている。

合理的な理由も示さないまま解雇を強行したとして、首都圏大学非常勤講師組合は大学側に団交を要求。大学側はついにこれに応じ、6月21日の夜、同組合との団体交渉に応じた。

だが、この団交の場に、人事担当の常務理事は出席せず。さらに、復職を求めた講師らの声を聞くこともなく、解雇について納得のいく説明を行われないまま、交渉は決裂してしまったという。

結局、解雇された非常勤講師らは、22日午後に地位確認を求めて日本大学を提訴することに。両者の争いは泥沼の様相を呈してきた。

アメフト問題に揺れる日大だが、「非常勤講師の雇用問題」という火種にどう対応するのだろうか。

 

何も変わらなかった

「団体交渉に責任ある人物は出てきませんでした。大学側の説明はこれまでの交渉ともつじつまが合いません。誠実さを欠いているとしか言いようがありません」

6月21日午後9時過ぎ。団体交渉の会場から出てきた非常勤講師の男性が、呆れた顔で漏らした。

今年3月末、日本大学は危機管理学部とスポーツ科学部の英語の非常勤講師15人を解雇。非常勤講師らによれば、雇用当初は「最低でも4年間の雇用」を約束していたにもかかわらず、「教育課程の再構築を行う」という不明瞭な理由で、大学側は非常勤講師の解雇に踏み切ったという。

その後、解雇されたのはこの2つの学部の非常勤講師だけではなかったことが判明。複数の学部で、非常勤講師の雇い止めをしていたようだ。少なくとも複数の学部で、3月末時点で数十人が解雇されたとみられ、このままいけば、日大で働く3000人超の非常勤講師全員が解雇されるのではないか――そんな危機感が高まっていたという。

冒頭で嘆いた非常勤講師も、大学に突然の解雇を告げられた一人だ。それから3ヵ月。アメフト部の問題で世間の批判を浴びたこともあり、大学側も態度を改め、少しは耳を傾けてくれるだろう......と、今回の団交に少なからぬ期待を持っていたという。

特に焦点となっていたのが、大学側の人事の責任者である常務理事が団交の場に出て来るかどうか、だった。

今年3月時点での大学側の人事責任者は、アメフト部の前監督で、選手に危険なタックルを指示したかどうかが焦点となっている内田正人氏(肩書は人事担当常務理事兼人事部長)。過去、内田氏は非常勤講師組合との団体交渉には一度も出席したことはなく、結局責任者が何の説明もしないまま、大学は多くの非常勤講師を解雇したのだった。

その内田氏は、危険タックル問題の責任をとるような形で、5月30日付で常務理事を辞任。6月11日付で人事部長の職も解かれた。

これによって、大学側の対応の変化を期待していたというが、21日の団交でも、結局人事担当の常務理事は出席せず。非常勤講師への姿勢も、ほとんど何の変化もなかったという。その失意の大きさたるや、計り知れないものがあっただろう。

午後6時半から始まった団体交渉は2時間半に及んだ。非常勤講師側は、「なぜ突然解雇したのか」「そのようなことが許されるのか」といったことを問うたが、大学はほとんどすべてを「筋違いな主張」と一蹴。結局両者に歩み寄りは見られず、決裂してしまった。

もはや大学との交渉の余地はなくなった、と非常勤講師らは判断。解雇された非常勤講師6人と、担当している授業を減らされた2人が、本日6月22日午後、早期に復職させるよう地位確認を求める訴えを、東京地方裁判所に起こすことを決めたという。