私は2007年4月から朝日新聞の夕刊で大リーグに関連したコラムの連載をしている。
「大リーグが大好き!」という総合タイトルの下、ほぼ週に1回のペースで。この連載は12年目となった今も続いているが、11年間のコラムの中から厳選して再構成したのが拙著『人に言いたくなる アメリカと野球の「ちょっとイイ話」』。
私の本業は医師(病理医)だが、本業より遥かに長く大リーグに入れ込んで生きてきた(念のために言っておきますが、入れ込んだ長さではなく強さは大リーグより本業のほうが上です……たぶん)。
8歳で大リーグにハマり、それから60年以上にわたってズ〜ッと大リーグの熱狂的ファンのままなのだ。……こういう人生を歩むことになったキッカケについても拙著では触れています。
ところで。そんな私に向かって、こう言う人がけっこういる。
「大リーグって、アメリカの野球にすぎないですよね。ようするに、たかが野球ですよね。そんなもんにそんなに入れ込んで飽きません?」。
こういうことを平気で言うのってイイ度胸しているというか無神経と思うが、私は怒ったりしないしイヤな顔もしない。淡々と「飽きませんよ」と答えた後、こう続ける。
「あなたが親米派か反米派か嫌米派か知りませんけど、アメリカに少しは興味があるでしょうし、アメリカという国についてチョットは考えることがありますよね。
イイか悪いかべつにしてアメリカ抜きに世界情勢を語ったり考えたりしても意味ないですからね。ということは、大リーグは大事なんですよ。
大リーグはアメリカ文化の真髄のひとつと言ってもイイんですから。大リーグをキーワードにアメリカを理解することだって可能なんですよ」。
この説明で納得してくれない人には何もつけ加えないが、ここではチョットだけつけ加えておきたい。
私は大リーガーゆかりの田舎街を取材するためにしょっちゅうアメリカに出かけて爆走ドライブ一人旅をしているが、アメリカ滞在最終日には必ず大型書店で朝から晩まで過ごす。
どんな本が出版されているかジャンルを問わず知りたいし、面白い本を見つけたらジャンルを問わず購入したいから。
こうしたことを繰り返しているうちに気付いたことがある。アメリカのどこの大型書店でも最も広いスペースが割かれている作家はスティーヴン・キングなのだ。次はジョン・グリシャムで、その次はリー・チャイルド。
この「発見」は実に嬉しいものだった。この3人のベストセラー作家は野球が大好きだからだ。
スティーヴン・キングは大リーグ球団ボストン・レッドソックスの熱烈なファンとしても有名。レッドソックスの本拠地球場「フェンウェイパーク」で始球式を行ったこともある。
大リーグに関することが出てくる小説を数多く発表しているし、野球がテーマのエッセイ風の文章も発表している。