それでは、あなたの片頭痛は治りません~「頭痛先生」が教えます

間違いだらけの片頭痛①
坂井 文彦 プロフィール

なぜ週末になると片頭痛になるの?

Q4 片頭痛の時、痛み止めのクスリがとりあえず効果的な気がしますが、なるべくクスリは飲みたくないのです。ほかに何か片頭痛を紛らす方法はないでしょうか?

A4 鎮痛薬には炎症を抑える効果があります。片頭痛は脳の血管拡張による炎症が関係しますから痛み始めたときに容量を守って飲むのは、私たち医師もやっているように効果はあります。

ただし予防のためにクスリを飲み過ぎると、やがて片頭痛が慢性化してかえって悪化する可能性があります。『鎮痛薬を飲むと、むしろ悪化する片頭痛があるのをご存知ですか』という原稿に詳しく書きましたので是非お読みください。

よく、「頭痛に襲われた時、頭は冷やすのと温めるのとどちらがよいか」という質問も受けます。血管拡張の片頭痛なら、冷やしたほうがラクになるでしょうし、緊張型頭痛なら温めたほうがよいでしょう。前頭部や目の奥の痛みは冷やす、後頭部は温めると良いという方が少なくありません。

頭が痛いとき、首をぐるぐる回してゴキゴキさせる人もいると思います。この行為は絶対やめたほうがいいでしょう。片頭痛でも、緊張型頭痛でも首の筋肉に負担をかけるだけです。

 

Q5 忙しい平日を過ごしてストレスからやっと解放された……とホッとし始めた土日になるとよく片頭痛が起きます。ストレスが片頭痛の原因だというのに、なぜ週末に頭痛になってしまうのでしょうか?

A5 これは週末片頭痛と呼ばれる頭痛です。複雑な人間関係や仕事で、人間には予想以上のストレスが押し寄せています。その心と体のリズムを整えるのがA2で説明したセロトニンです。精いっぱい脳内で働いています。

体も心もホッとした週末、脳はセロトニンの放出をやめてしまいます。セロトニンの枯渇状態が片頭痛を引き起こしてしまうのです。

せっかくの休みに片頭痛になり、家庭で居たたまれなくなっている患者さんも少なくありません。どうすればよいのでしょうか。

まず、金曜土曜の夜、遅くまで起きて飲食したりして、土日に朝寝坊しがちですが、あまり生活のリズムを変えないほうがいいでしょう。

休日は爽快な気分で運動する、気持ちをリフレッシュするよう努める。セロトニンを脳内で再生産できるような生活習慣にすると週末片頭痛は防げます。

ポリフェノールのせいで片頭痛?

さて、金曜日に赤ワインを飲むと週末に片頭痛になるという冒頭の患者さんですが、ポリフェノールは片頭痛の原因なのでしょうか?

片頭痛に悩む方の中には、アルコール、特に赤ワインがダメという方が少なくありません。もちろん、片頭痛の最中にアルコールを飲むと、頭痛はひどくなります。

ただし、この患者さんのように勘違いしている人も多いのですが、ポリフェノールは片頭痛の誘因ではないのです。赤ワインに含まれるチラミンが血管に作用するため片頭痛を引き起こすというのが定説です。

冒頭の患者さんは、ひどい片頭痛を引き起こす可能性のあるものが赤ワイン以外にも、緊張からの解放、週末と揃っています。それぞれが片頭痛を引き起こしやすく、相乗作用も考えられます。

飲食と片頭痛に関しては膨大な研究がありますが、確実なのは、「空腹を我慢すると片頭痛が起こりやすい」というものくらいです。血糖値が下がることが誘因になるのです。

片頭痛の引き金となる生活習慣を見つけ出し、それを遠ざけること。

生活リズムを平日も土日もなるべく崩さず、脳によさそうなことを週末にすること。

もちろんこれだけで片頭痛から卒業できるとは限りませんが、かなり効果があるでしょう。次回は、片頭痛を予防する体操についてご説明します。

「片頭痛」卒業のためのクスリとのつきあい方、自分で予防する体操の方法などを網羅する坂井氏の近著

坂井文彦(さかい ふみひこ)
埼玉国際頭痛センター長。1969年慶應義塾大学医学部卒業後、同内科学教室に入局し、神経内科および脳循環・代謝の研究を始める。76年米国ベイラー医科大学神経内科留学。Harold G. Wolff賞受賞(片頭痛と脳循環の研究)。97年11月北里大学医学部神経内科学教授。2010年11月より埼玉医科大学客員教授、埼玉国際頭痛センター長として日本初の頭痛専門病院を立ち上げる。日本頭痛学会、国際頭痛学会の理事長など重職を歴任した頭痛治療の世界的名医で、長年にわたり、日本の頭痛医療を進化させてきた。「頭痛そのものが脳の病気」「薬を上手に使うことでコントロールできる」「頭痛ダイアリーは必ずつける」「片頭痛予防体操で慢性化を防げる」等、啓蒙活動に尽力。監修書に『きょうの健康シリーズ 頭痛で悩む人に』(NHK出版)がある。このほど『「片頭痛」からの卒業』(講談社現代新書)を上梓した。