日本の報道ではわからない、トランプ大統領の「真の野望」が見えた

現地取材で初めてわかること
立岩 陽一郎 プロフィール

市井の人々が「王」を語る

私は2017年の元旦に日本を離れて米国に居を移した。トランプが大統領選挙で当選した約2ヵ月後、大統領に正式に就任する約3週間前のことである。

以後、1年近く、首都ワシントンDCにあるアメリカン大学に客員研究員として籍を置きながら、新大統領の言動を追うと同時に、大都市だけでない米国各地を訪ねて、人々の声を聞いて回った。

トランプ大統領を支持する人もいれば、彼を非難したり懸念を示したりする人もいた。また、トランプが大統領になったという事実にどう向き合ってよいかわからない非米国籍の人や、英語を喋れない人もいた。

私は彼らの話を逐一メモに取り、それをもとに、ウェブメディア「クーリエ・ジャポン」に「『トランプ王国』の研究」と題したレポートを連載して、少なからぬ反響を得た。さらに、そのコンテンツから抜粋した内容に加筆修正を施して、『トランプ王国の素顔』という書籍を刊行した。

裕福な人、貧困層の人、マイノリティ、求職中の中高年、トランプ支持者が圧倒的に多いオハイオ州やジョージア州の住民、大学教授、老人ホーム入居者、アフリカからの移民、デモに参加する高校生や家族連れ、海兵隊員……などなど、拙著にはさまざまな人が登場する。いずれも有名ではなく、あくまで一般人ばかりだ。

大事なことは、トランプが、そうした市井の人々が考察や議論を重ねた末の選挙で大統領に選ばれたという点だ。そして、彼らの中の少なからぬ数が、今も「トランプ王国」を支えている。

だから、その声に耳を傾けていけば、なぜ大都市圏やメディアで不人気のトランプが米国のリーダーの座に居続けているのかがわかるし、同時に、支持層からの人気の維持を最優先するトランプが何をしようとするのかが見えてくる。

 

現実味を帯びる「トランプ再選」

日本のメディアは、前述のように日本政府の情報ばかりに頼っているため、トランプの意図を理解も予想もできない。それどころか、政府関係者に言われるままに「米朝会談は実現しない」「米国は北朝鮮を限定的に軍事攻撃する」などとまったくの誤報を流したメディアもあった。

しかし、トランプを支持する(あるいは批判する)一般の人々の意見を多く聞いていけば、彼の考えと政策の方向性を推し量ることができる。拙著がそのための一助になれば幸いだ。

一時期、「今年11月の中間選挙でトランプ率いる共和党は厳しい状況に陥る」という指摘もあったが、米朝首脳会談で支持率を維持あるいは上昇させて、逆の流れが強くなる可能性も出てきた。そうなると、さらに2年後の2020年の「トランプ大統領再選」という、つい最近までほとんど不可能と思われていた事態も現実味を帯びてくる(何しろ「トランプ政権は崩壊する」「任期途中での辞任は必至」などと言われていたのだ)。

トランプが米国の大統領であり続けるか否かは、もちろん、日本も含めた世界の政治、経済、安全保障に多大な影響を与える。その行方を見通すためにも、また、従来の大統領と大きく考え方が異なる彼の“次の一手”を予測するためにも、この「王」を支えている人々を知ることから始めなければならない。