陰謀論ばかり語る「迷惑な人」を一蹴する方法

こうすれば、ぐうの音も出ない
佐藤 優 プロフィール

「本能寺の変」は光秀が単独で突発的に起こした事件で、背後の黒幕は存在しない。

実証的かつ合理的に考えず、荒唐無稽な陰謀論に惹きつけられる人が多いのはなぜなのだろうかという問題についても呉座氏は踏み込んで考察する。

〈後世の人間は結果を知っているから、「勝者は明確な目標を設定しており、その目標を実現するために全てを計算しており、事前に立てた作戦通りに行動していたにちがいない!」と考えがちである。(中略)

この結果からの逆算は、やろうと思えば、いくらでも遡らせることができる。「起点を遡ることで宿命的な対立を演出する」のも陰謀論者の常套手段である。

秦郁彦氏は「ある結果をもたらした原因は多岐にわたり軽重の順位をつけにくい。しかも対象期間を長くとるほど間接的な因果関係が混入して、「風が吹けば桶屋がもうかる」式の説明法が可能になってしまう。

実際に陰謀史観の多くは、好みの事象を見つけようと起点を百年ぐらい前までさかのぼらせるのは珍しくない」と述べている〉

「日米開戦がコミンテルン(共産主義インターナショナル)による陰謀だ」とか「戦後の日本政治はアメリカに操られている」といった類いの言説も「起点を遡ることで宿命的な対立を演出する」という手法を用いている。

呉座氏は陰謀論の強さについて、こう指摘する。

〈人はなぜ陰謀論を信じるのか。これは「因果関係の単純明快すぎる説明」という陰謀論の特徴に負うところが大きい。

陰謀論はしばしば大事件の要因を一つに絞る。そして一つの要因に絞ることで、複数の要因に言及する通説よりも分かりやすくなるのだ〉

われわれが生きている世界は複雑だ。従って、現実を因果関係で単純明快に説明することはできないのである。教養を身につけ、複雑な状況を構造的にとらえることが重要になる。

『週刊現代』2018年6月30日号より