「水かけ姫」ことチョ・ヒョンミン氏。photo by gettyimages

大韓航空「水かけ姫」への執拗過ぎるバッシングはなぜ起きたか

韓国政府もマスコミも叩きに回ったワケ

前例のない「執拗さ」に驚く

約2ヵ月前、韓国発のニュースで日本でも話題となった事件があった。

大韓航空オーナーの次女が、ヒステリックに声を荒げ、水の入ったコップを投げつける場面が録音された音声ファイルが公開されたのだ。相手は取引先の職員で、韓国マスコミはもちろん、日本のマスコミまでが明らかな「パワハラ」だと口を揃えた。

数年前、いわゆる「ナッツリターン」として知られる事件を引き起こした長女の騒動までが引き合いに出され、連日報道された。これらの騒動で大韓航空オーナー一家のイメージは完全に地に落ちたと言っていいだろう。

今回の事件が報道されると、韓国国内では、大韓航空オーナー一家に対し凄まじいバッシングが起こった。

そもそも韓国では、いわゆる富豪や金持ちに対する世間のイメージは良くない。韓国ドラマを見ても、「金持ち=悪人、傲慢」という構図はよく登場する。ドラマのイメージがそんな固定観念を生んだのか、世間が持っていたイメージがドラマに反映されたのかは不明だが、韓国ドラマに登場する金持ちの中で、「いい人」はシンデレラのような貧しく健気な女主人公に恋をする王子様しかいない。

大韓航空の娘たちは言うなればシンデレラを虐める義姉といったところか。事件は日本でも週刊誌やテレビのワイドショーがこぞって報道し、「ナッツ姫」に続いて「水かけ姫」という新しい名称まで登場した。

 

私がこれらの報道を見て引っかかったのは、バッシングの「執拗さ」である。マスコミ報道や政府の反応を見ていると、これはパワハラ娘の逸脱行為に対する世間の制裁、本当にそれだけなのだろうか?という疑念が湧いてくるほどに度を過ぎた攻撃のように感じられたのだ。

マスコミは連日、今回の問題を引き起こした次女のみならず、父親、母親、姉、そして兄の疑惑を探し出しては報道していたのだが、それらの多くは外国人家政婦の雇用問題であったり、20年前の不正入学疑惑、免税品不正導入など、今回の事件とはまったく関係ない問題であった。そこにはまるで、大韓航空オーナー一家に対して恨みでもあるのかと思われるほどの「執拗さ」が感じられたのだ。

政府の大韓航空叩きにも前例がない「執拗さ」があった。

水かけ事件以降、大韓航空オーナー一家及び韓進グループ系列社が受けたのは家宅捜査だけでも11回に上る。これらを捜査・調査している組織は警察、検察だけではなく関税庁、法務部、教育部、雇用労働部などで、広範囲の組織が同時多発的に、執拗な捜索に乗り出している。

韓国内では「狙い撃ち」、「企業弾圧」という批判も出ているが、これも納得できる状況だ。叩いたら埃が出たというのではなく、埃が出るまで叩いているのだ。これらの捜索は単純に、人に水をかけた、というパワハラだけのため実施されているのだろうか。