「薬」=「毒」なので、一気に身体から抜くのが理想的である

私的「減薬・断薬」放浪記【6】
上原 善広 プロフィール

結局ヤクに頼りたいだけじゃないか

日本の断薬はまだ始まって間もない段階だから、今後は生保や低収入に陥っている人の断薬が課題となるだろう。「断薬」と「自立した生活」は、実はイコールでもあるからだ。この点は重要なので、次回以降でもまた触れていきたい。

内海医師は、通常の診察と並行して本の執筆や、フェイスブックをはじめとするウェブや講演、セミナーなどで啓蒙活動をしてきたが、今後はさらに新たな活動を展開するという。

――1年間170件ほど講演をやった年もありましたが、ネットも含めて、あまり効果ないなと感じたんです。結局ヤク(薬)に頼りたいだけじゃないかと。患者さん向けにやっても結局、国や業界が変わらないとダメです。

だからもっと広く知らしめたいので、今後は政治家でも協力してくれる人とタイアップしていきたい。私が政治家になるわけではありませんよ。厚労省に行って何度か話し合いをしたこともありますが、みんながみんな現状に満足しているわけでもなさそうで、賛同してくれる人がいても圧力がすごくて表立って動けないんです。

だからこれはもう、政治に働きかけるしかない。ネットを見ている層ではなく、もっと新しい啓蒙を考えています。

その活動の一環として、保育園も創設する予定です。やはり子どもたちをさまざまな害悪から保護したいのと、私が得た知識や経験を親ごさんにも伝えることができますからね。そこからいろいろな方面に広がっていけばと思っています――

通常の治療活動で患者さんを啓蒙しても、救える患者さんはごく一部に止まってしまう。「結局ヤクに頼りたいだけじゃないか」という内海医師の言葉は辛辣だが、患者側はもちろん、これは医師に対する言葉でもあると思う。

ウェブの情報も、さまざまな圧力から統制されていると内海医師は話す。たしかに、例えば医師やクリニックの情報は皆無だ。あったとしても褒めたものしか流れていない。薬の情報もただの羅列であふれ、ネガティブな情報はほとんど出ていない。

だから、とくに医療における情報弱者の私たちに訴えるのではなく、保育施設などの創設と並行して、国などに広く訴えていきたいという内海医師の思いは強く伝わってきた。

――こういう活動をやっていると、ただの宗教信者だと思われがちですが、私は典型的な無宗教者。あえて言うなら自然崇拝論者(アニミズム信者)です。精神医学反対となると、サイエントロジーというニューエイジ宗教が出てきますが、サイエントロジーは精神科の批判をしているので共闘関係にあるけど、私は信者でも何でもないし、だいたい組織は腐っていくのが常ですから信用していません――

 

しかし私は精神医療に限らず、医療過多の犠牲になるくらいであれば、「精神疾患を抱える患者さんが宗教に頼るのも、実は一つの手ではないか」と内海医師に訊ねてみた。特に精神医療では、心のよりどころさえあれば、薬害に陥られなくて済むのではないかと思ったのだ。

――宗教も、中身を判断して自分でよく吟味してとしか言えないし、もともと私の実家が寺の住職をしていたので、宗教の欺瞞を見ながら育ったこともあり、宗教や組織は信用してないんですよ――
 
たしかに、「良い宗教者」を選ぶのは、「良い医師」を選ぶより難しい。ここまでくると、私たちはどのような医療を選ぶかで、生き方を試されているのではないかとさえ思えてくる。内海医師はぽつりと言った。

――だから私の活動は、どう生きるのかという、一種の哲学にちかいのかもしれません――

〈次回に続く〉