「薬」=「毒」なので、一気に身体から抜くのが理想的である

私的「減薬・断薬」放浪記【6】
上原 善広 プロフィール

大半の人が必要のない治療を行っている

――製薬会社が一番問題なのは間違いありませんから、製薬会社を訴える運動が日本でもっと起こればいいのですが、そうなっていない。だから製薬会社が問題なのは間違いないけども、現状では、患者、家族や夫婦の問題という当事者に行きつきます。

例えば子供が暴れるのには、それだけの理由があると考えた方が良いです。昔なら家族や友人や近くのお寺さんがサポートして、あまり精神的な問題や社会的な問題に医師は関わらなかった。現在の日本ではそうしたシステムや、家族関係が破綻しています。

だからといって、すぐに病院に行って薬で解決しようとするのは違うと思うのです。生きている人で、何の悩みもないという人はほぼいない。悩みと対峙することも人生の一つなのに、それを薬で解決しようとするのは間違っていると思います。本当に医学的な治療が必要な人もいますが、そのような人はごく一部で、大半の人が必要のない治療を行っています。

 

結局のところ、根本的な原因に対処しない限り、結局は薬に頼って依存してしまうことになります。そのような薬に頼ってしまう人は大抵、夫婦や家族の問題を抱えていることが多い。

もう少し家族関係がしっかりしていれば、もともと精神科や心療内科なんかにかからないし、もし間違ってかかってしまっても、そういう人は抜けるのが早い。だからまずは素人でも勉強して、自分で身を守るしかないけど、それもあまり広まっていない。

しかし睡眠薬を含めた精神薬は、少しの量でも脳に重いダメージを与えますし、脳が一旦ダメージを受けると回復は非常に難しいから危険なんです――

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内海医師と熊本の松田史彦医師、双方に共通するのは「薬は毒なので一気に抜くのが理想」とする点だ。

例えばアルコール依存や覚醒剤中毒の場合、ゆっくり抜くことなどあり得ない。だから抜くときは断薬施設などを使って一気に抜く方がいいのだが、日本の現状では、睡眠薬を含む精神薬を抜く施設がない。仕事をしながら抜くことになるので、ゆっくり減薬していく方法を取らざるを得ないという考え方だ。

もう一つ、双方のクリニックに共通しているのは、自費診療が主体となっている点だ。大雑把な分け方として、減薬派のクリニックは保険が効くが、断薬をうたっているクリニックでは自費診療が多い。それはなぜなのか。

――断薬のサポートが自費診療でないと難しいからです。クスリを減らすだけなら保険診療でもできるかもしれませんが、様々な方法で体と脳を立て直す必要がありますから、食事療法や栄養療法など、いろんなことをします。

さらに現代は薬だけでなく、食べ物などからさまざまな神経毒を身体に取り込んでしまって、それが様々な不調の原因になっている可能性が高い。ですから減薬にあたっては、低温サウナなどのデトックス(解毒)も使います。

薬を抜くだけでは、ただ中毒から抜けただけですから、根本的な解決にはなっていないからです。依存状態にあると、止めてもまた簡単に手を出してしまいかねないのです。うちでは月に3万から5万円程度かかりますが、低収入の人の場合はもちろん相談に応じます。

しかし生活保護の方は基本的に断っています。生保では3割くらいの人が精神科にかかっていますが、生保のために病院を〝卒業〟できない人が多いからです。生保も依存の一つですから、まずこの基本的な考え方を変えていかないと断薬自体ができないし、生活保護からも卒業と考えています――

内海医師は「生保も低収入も、努力しない人が多い」と話す。

それは確かに正論かもしれないが、さまざまな環境からそうできない人も多い。だから一見すると内海医師の話は「成功者の理論」に感じるかもしれないが、内海医師がそう考えるようになったのには、自身も身障者の作業場を作るなど、これまでの様々な活動から赤字に陥ったこともあり、時には多額の借金までして、現在の活動につなげていった経緯があるからで、一概には言えない。