昔の方が「量産型大学生」は多かった
数年前から、似たような服装の大学生が「量産型大学生」と揶揄されることがあります。男女を問わず、同じようなトップス、ボトムスを身につけ、同じような組み合わせの服装をした学生が多数いるというのです。
しかし、特定のファッショントレンドに追随する人が多数出現するのは今に始まったことではありません。むしろ昔の方が、そのときどきのファッショントレンドに雪崩を起こしたように追随してきたのが実情です。
それどころか、この数年、具体的には2010年前後を境に、そうした雪崩をうったようなトレンドへの追随が緩やかになってきたように、私の目には映ります。いわば「トレンドの崩壊」とでも呼ぶべき状況となっているのです。
これまでも「アパレル不況」については指摘されてきましたが、こうした変化について、具体的なファッショントレンドの推移をもとに指摘した例は、あまりなかったように思います。本記事では、その点を考えてみたいと思います。
変化を考えるうえで最も象徴的だといえるのは、2015年夏くらいから始まったワイドパンツブームではないかと思います。
2015年夏にジーユーがレディースの「ガウチョパンツ」を100万枚販売しました。ガウチョパンツというのはワイドシルエットで、丈の長さがふくらはぎの真ん中あたりまでのパンツを指します。

年配の人にはキュロットスカートといった方がイメージしやすいでしょうか。ちなみに2018年夏現在では、同じような形の同じ丈の商品が「ワイドシルエットアンクル丈パンツ」などという名称で売られています。
アパレル業界では2010年以降、年々大ヒット商品が出にくくなっていましたから、2015年夏の「ガウチョパンツ100万枚販売」というのは久しぶりのヒット商品だといえます。これをきっかけに、ワイドシルエットのパンツがマス層へ広がり、3年後の現在は女性だけでなく、男性もワイドパンツを着用するようになっています。
しかし、都心の通行人を見てもらいたいのですが、ワイドシルエットのパンツを穿いている人ばかりではないことに気が付くのではないでしょうか。相当数の男女が、ワイドパンツとは完全に対極の細いシルエットの「スキニーパンツ」をいまだに穿いていますし、同じ人が両方のパンツを使い分けているケースもよく見られます。
これは今までにない傾向だといえます。なぜかというと、このスキニーパンツというのは、2008年から2014年までマス層に広がったトレンド商品で、ワイドパンツの「一つ前」の流行なのです。