トヨタとソフトバンクが合併する日~日本企業が覇権を取り戻すため

自動車業界「未来の年表」
週刊現代 プロフィール

「後から勝つ」戦術

田中 自動運転に参入したアマゾンのジェフ・ベゾスもテスラのイーロン・マスクも、世界のトヨタのライバルの経営者は皆ビジョナリーです。

たとえばアマゾンのようなファストデリバリーのサービスは、それがない時代、消費者は誰もそのサービスを望んではいなかった。知らないのですから当たり前です。

しかしそのサービスが出現すれば、ニーズが爆発することをベゾスは確信していたのです。彼らは、自分が思い描く未来を実現させるために動いているといっていい。

一方の豊田社長は、そうしたビジョナリーの動きを知りながらも、巨大な組織や日本の産業のことまで考慮しながら動いている経営者です。

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 これからの大きなシフトチェンジの時代には、互いの足りないものを補うことが大切です。トヨタに足りないものをソフトバンクが補い、その逆もしかり。そういう関係を築いていくべきです。

田中 非常に厳しい環境にあるトヨタですが、私はまた覇権を握り返すと思っています。それは豊田社長に尋常ならざる危機感があるからです。

しかし、時価総額で大きな溝をあけられている巨大テック企業の研究開発費は、トヨタのそれとは桁違いに巨大なものです。得意分野を生かして、苦手な分野を克服するには、思い切った提携、合併が必要かもしれません。

 

 シリコンバレーの大物でペイパルの創業者のピーター・ティールはこう言っています。「ファースト・ムーバー(先行者)は決してアドバンテージではない」と。

チェスで言えば「勝つためには終盤を考えろ」ということ。次世代自動車産業の覇権争いは、たしかに現時点では、米メガテック企業や中国企業に負けています。しかし日本企業は松下幸之助がそうだったように、「後から勝つ」ことも戦術の一つにあるのです。

田中 トヨタも元々は自動織機から自動車メーカーに転身した企業です。豊田章男さんは孫社長のように、新たな「創業者」となることを決意しているのかもしれません。

田中道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール教授。シカゴ大学MBA。株式会社マージングポイント代表取締役社長も務める。最新刊『2022年の次世代自動車産業』(PHPビジネス新書)
嶋聡(しま・さとし)
ソフトバンク前社長室長。名古屋大学卒。代議士を経て、'05年よりソフトバンク社長室長となり孫正義の参謀として活躍。著書に『孫正義2.0新社長学』(双葉社)ほか