トヨタとソフトバンクが合併する日~日本企業が覇権を取り戻すため

自動車業界「未来の年表」
週刊現代 プロフィール

主戦場はライドシェア

田中 間もなくクルマはスマホ以上に情報技術が集積されたIoT機器になるでしょう。自動運転が実現すれば、クルマで映画を見たり、買い物ができるようになったりします。

さらにクルマを動かす電気は再生エネルギーを利用することもまた前提となってきています。

次世代自動車産業は、クルマそのもののほかに、IT、AI、電機、電子、電力などの産業を巻き込んで変化していく。

 そう。ワンセットなのに、それに気づいていない人がいる。たとえば日本ではこう考えられがちです。EV車が普及するとますます電気が必要になり、火力発電所はまだまだ主要な電力であり続ける、と。

しかしそれは違う。産油大国のサウジアラビアはソフトバンクと組んで21兆円を投じて、太陽光発電所を整備している。

油田に頼ってきたムハンマド皇太子が「もはや石油の時代ではない」と考えていることの証左です。再生エネルギーが今後のエネルギー産業の中核となることを示しています。

田中 その発電コストは1キロワット当たりわずか2円。供給の不安定さが課題とされてきた再生エネルギーですが、自動車産業でEV化が進んだことで、蓄電池の技術も飛躍的に進化したのです。

 

 この流れに日本は乗り遅れてはいけません。移動手段と通信手段、そしてエネルギーが大きくパラダイムシフトしているいまは、第4次産業革命が進行しているといえます。その中心に自動車産業があるわけですから。

田中 トヨタにとって喫緊の問題は、まだ先だと思われていた完全自動運転がもう来年には実現しそうだということです。

今年初め、米GMが「2019年内の完全自動運転車の実用化」を発表し、衝撃を与えました。日本勢は完全自動運転車の登場は2030年くらいと見てきました。

それまでは高速道路は自動運転だが、一般道は人間の運転というように、段階的に進むと考えていた。

ところがGMが発表したイメージ図には、その段階をすっ飛ばして、ハンドルもアクセルやブレーキのペダルもついていませんでした。完全自動運転車の実現はもはや目の前まできているのです。

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 今年、中国・成都で行われたIoTシンポジウムに参加したとき、参加者の関心の中心も完全自動運転でした。

「嶋さん、いつ自動運転が中国で実現しますか」と聞かれて、私は2022年だと答えました。これは都市で完全自動運転のクルマが走り回るという意味です。

おそらく中国は2022年の北京冬季オリンピックまでに、北京の市街を自動運転車だけにして、選手や観客の移動はすべてそれで行うことを考えているでしょう。私が政策ブレーンだったら、習近平にそう進言します。

田中 私も2020年の東京オリンピックで、日本は東京を完全自動運転車のショールームにするべきだと思っています。

GMに比べてトヨタは自動運転の実装に大幅な後れをとっていて、挑戦的な提案ではありますが、それまでに何とか完全自動運転車を開発しなければ、米国勢、中国勢の勢いに埋没しかねません。

 残念ながら日本ではウーバーなどのライドシェア(相乗り)サービスへの認識も遅れています。このことが次世代自動車産業の目算を誤らせる結果にもなっている。私は日本でライドシェアの許認可が下りないことに危機感を覚えています。

田中 非常に残念なことです。世界で自動運転車の開発が急がれているのは、その主戦場となるのがライドシェアの市場だからです。

米ウーバー、中国の滴滴出行など世界のライドシェアの市場は1.5兆円。わずか2年後には倍の3兆円になると予想されています。