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トヨタとソフトバンクが合併する日~日本企業が覇権を取り戻すため

自動車業界「未来の年表」

自動車が発明されたとき、覇権を握ったのは、それまでの馬車業者ではなかった。同様に、自動運転時代のクルマの覇者は、自動車メーカーではないのか? これからのシナリオを、立教大学ビジネススクール教授で『2022年の次世代自動車産業』の著書もある田中道昭氏、ソフトバンク前社長室長の嶋聡氏というプロ2人が読み解く。

豊田章男社長の危機感

田中 純利益が約2兆5000億円という過去最高益をたたき出したトヨタですが、5月9日の決算発表での豊田章男社長の危機感は相当なものでした。

「ライバルも競争のルールも変わり、まさに未知の世界での生死をかけた戦いが始まっている」と語りましたが、次世代自動車産業に対し、いま最も危機感を抱いている経営者だと思います。

 世界企業の時価総額を見ると、それは一目瞭然でしょう。トヨタは2007年には世界10位に入っていた。ところがいまや1位アップル、2位アマゾン、3位がマイクロソフトで、4位がグーグルを傘下に持つアルファベット。

巨大テクノロジー企業が上位を席巻するなか、トヨタは37位まで順位を落としています。

米IT大手の時価総額はアップルで102兆円、アマゾンで90兆円ですが、トヨタはせいぜい24兆円。巨大IT企業からみれば、トヨタはまるごと買収されてもおかしくない規模です。最高益を出したからといって、安穏とできる状況ではありません。

 

田中 世界ではすでにEV(電気自動車)化は大前提です。そのうえで自動運転や自動車のIoT(モノのインターネット化)をどう急ぐかが議論になっている。ところが日本では、いまだEV化にどう対応するかという議論に終始しています。

次世代自動車産業の「未来の年表」を見渡したとき、旧来の自動車メーカーが苦しいのは、業界全体の規模が縮小し、生産台数も減少しそうだということです。

これまで主役だった自動車メーカーに代わって、グーグルやエヌビディア、そしてアマゾンなどのテクノロジー企業がその覇権を握ろうとしています。

 EV化では、エンジンとガソリンで動かしていたクルマが、モーターと電池で動くようになります。

メカニックで技術の集積が必要だったエンジンが消えるということは、クルマを作れる人が増えるということですから、新興企業からの新規参入が容易になります。

しかし自動車産業で起こっているのは、さらに大きな変化です。クルマを起点として、他の分野の産業構造まで、一気に変えようとしている……。

田中 それがなかなか理解されていませんね。

 かつて馬車が鉄道に取って代わられ、さらに石炭で動いていた鉄道はガソリンで動く自動車に取って代わられました。いま起こっているのは、それと同じこと。

動力エネルギーと移動手段のクルマが大きく変化しようとしています。自動車業界のプレイヤーの顔ぶれが変わることを意味します。産業構造全体のルールが変わるのです。